定期契約の壁はどこに?LTV改善を阻む“出荷率低下”の真因に迫る~止まったのは“誰”か?~| 【連載アナリストブログ 第3章第2話】

UNCOVER TRUTHでアナリスト歴2年目の清水がデータ活用事例を紹介する連載ブログ
この記事では某化粧品メーカーと行った、出荷率低下の原因分析について3回にわたり紹介します。これを読んでいただければ、原因解明のプロセスをご理解いただけると思うので、是非最後までご覧ください!
本ブログを開いていただきありがとうございます!
UNCOVER TRUTHでアナリスト歴2年目の清水です。
今回は、化粧品の定期購入サービスを展開しているクライアント企業様と行った「出荷率低下の要因分析」の事例をご紹介します。
定期モデルにおいて「出荷されない」というのは、ユーザーが契約は続けているものの、何らかの理由で商品を受け取っていない状態を指します。
これは、LTVを下げるリスクだけでなく、顧客体験の悪化にもつながる重要なサインです。
<ラインナップ>
第1話 分析背景
第2話 出荷率低下要因分析 顧客軸の分析
第3話 出荷率低下要因分析 商品軸の分析
前回、第1話では分析背景についてご紹介いたしました。
第2話の今回は、顧客軸で出荷率低下の原因に迫った分析についてご紹介します。
目次
第2話 出荷率低下要因分析 顧客軸の分析
出荷率が下がっている背景を探るため、まずは「顧客軸」から分析をスタートしました。
「1人のお客さまが何品契約しているか?」「その月に出荷があったか?」といった、顧客を“主人公”とした視点です。(※商品側からの視点は次回の第3話でご紹介します)


分析①:出荷の有無で顧客を4分類
最初のステップとして
「その月に出荷予定があったか?」
「その月に出荷予定があったか?」
という2軸で、顧客を以下の4パターンに分類しました。

この4つのグループをもとに、以降の分析を進めていきました。
分析②:「予定も実績もなし」グループに着目
毎月の定期契約者全体に対し、各分類の顧客がどのくらいの割合を占めているかを確認したところ、出荷率が低い月ほど「④:予定なし&実績なし」の構成比が高くなる傾向が見られました。
そこで、④に分類される顧客の特徴を深掘りすることにしました。

分析③:「契約品数」に着目して深掘り
「④の顧客はなぜ出荷されていないのか?」を探るため、まず“契約品数”に注目しました。
仮説:契約品数が少ないと、出荷頻度も低くなりやすいのでは?
たとえば…3品契約していれば、商品A→B→Cと月ごとに出荷される可能性がある。
一方、1品契約だと「Aだけが2か月おきに届く」といった周期になりやすい。
実際に④の顧客における「契約品数ごとの構成比」を確認してみると、1品契約の割合が顕著に高いことが分かりました。
この傾向は、全体と比較しても明らかに高く出ており、 ④のグループに1品契約者が偏って存在していることが分かります。

分析④:1品契約者の増加トレンドを確認
ここで、以下のような因果の流れが仮説として見えてきます。
出荷率が低下している
→ 出荷予定・実績ともにない顧客が増えている
→ その大半は1品契約者
→ つまり1品契約者が増えると出荷率が下がる?
この仮説を検証するため、月別に「契約品数別の割合推移」をグラフで確認しました。
すると、月を追うごとに1品契約者の割合がじわじわ増えていることが分かりました。

分析⑤:「出荷間隔」で出荷頻度の違いを確認
さらに踏み込んで、1品契約者の増加が「出荷の頻度」にどれほど影響しているのか?を調べるため、「出荷間隔(前回出荷から次回出荷までの月数)」に着目しました。
なぜ出荷間隔を見るのか?
月次の出荷率は出荷間隔に大きく影響されるためです。
たとえば…すべてが毎月出荷されていれば、月次出荷率は100%、1か月おきなら50%、2か月おきなら33% になります。
その結果、1品契約者の約半数が「1か月おき」で出荷されている一方
契約品数が多い人ほど「毎月」の出荷が多い傾向が見られました。
つまり、1品契約者が増えることで、全体の出荷頻度が落ち、出荷率が下がっている可能性が高いと考えられます。

分析⑥:出荷間隔の月別傾向を確認
この仮説を検証するため、全体の出荷データにおける「出荷間隔の構成比」を月別に可視化しました。
結果
・1か月間隔の出荷割合が上昇傾向
・毎月の出荷割合はやや減少傾向
このことから、「1品契約者が増えたことで、出荷間隔が長くなっている → 出荷率が低下している」という因果が見えてきました。

分析まとめ
以上をまとめると、以下の構造が浮かび上がりました
課題:出荷率が低下している
原因:1品契約者の割合が増加している
└ 出荷予定も実績もない顧客が増加
└ その多くが1品契約者
└ 1品契約者は2か月間隔での出荷が多い
└ 結果として出荷頻度が下がっている
「出荷率が下がっている」という一見シンプルな課題の裏には、1品契約者の増加という小さな変化が、実は大きなインパクトをもたらしていたという構造が見えてきました。
このように、一つひとつの数値に目を向けて分解していくことで、現場では見落としがちなサインにも気づけることがあります。
今回はここまで!
次回「定期契約の壁はどこに?LTV改善を阻む“出荷率低下”の真因に迫る~出荷率低下の要因を“商品軸”から解き明かせ~」では、「なぜ1品契約者が増えてきたのか?」という背景を、商品軸から深掘りしていきます!
ぜひ、ご覧ください!