定期契約の壁はどこに?LTV改善を阻む“出荷率低下”の真因に迫る~出荷率低下の要因を“商品軸”から解き明かせ~| 【連載アナリストブログ 第3章第3話】

UNCOVER TRUTHでアナリスト歴2年目の清水がデータ活用事例を紹介する連載ブログ
この記事では某化粧品メーカーと行った、出荷率低下の原因分析について3回にわたり紹介します。これを読んでいただければ、原因解明のプロセスをご理解いただけると思うので、是非最後までご覧ください!
本ブログを開いていただきありがとうございます!
UNCOVER TRUTHでアナリスト歴2年目の清水です。
今回は、化粧品の定期購入サービスを展開しているクライアント企業様と行った「出荷率低下の要因分析」の事例をご紹介します。
定期モデルにおいて「出荷されない」というのは、ユーザーが契約は続けているものの、何らかの理由で商品を受け取っていない状態を指します。
これは、LTVを下げるリスクだけでなく、顧客体験の悪化にもつながる重要なサインです。
<ラインナップ>
第1話 分析背景
第2話 出荷率低下要因分析 顧客軸の分析
第3話 出荷率低下要因分析 商品軸の分析
前回、第2話では顧客軸の分析についてご紹介いたしました。
第3話の今回は、商品軸で出荷率低下の原因に迫った分析についてご紹介します。
目次
第3話 出荷率低下要因分析 商品軸の分析
第2話では、「1品契約者の増加」→「出荷頻度の減少」という流れが出荷率低下に影響していることを、顧客軸から明らかにしました。
今回はその続きを“商品軸”で探っていきます。
「そもそも、出荷されやすい/されにくい商品ラインがあるのでは?」という仮説が出発点です。

分析の方針
今回の企業様では、化粧品や乳液など複数の商品を扱っていますが、大きく分けて以下の4つの商品ラインに分類できます(年代や価格帯でセグメントされていました)。
まずは商品ラインごとの契約人数を確認し、出荷率に与える影響の大きさを把握するところからスタートしました。
なぜ契約人数から見るのか?
シンプルに、契約人数が多いほど事業全体へのインパクトが大きいからです。
たとえば…
商品ラインA:契約者数 1,000人
商品ラインB:契約者数 10,000人
この両者で出荷率が1%改善された場合、Aでは10人、Bでは100人の出荷が追加されます。
同じ1%の改善でも、規模によってその“重み”が変わってくるんですね。
そこで、まずは年月ごとの契約者推移を商品ライン別にグラフで可視化してみました。

グラフを確認すると、ある商品ライン(仮に「A」とします)が他ラインと比べて圧倒的に契約者数が多く、しかも右肩上がりであることがわかりました。
ここで1つの疑問が生まれます。
契約者は増えているのに、なぜ出荷率は下がっているの?
ここで、第2話の結果を思い出してください。
「1品契約者が増えると、出荷間隔が空いて出荷率が下がる」でした。
つまり商品ラインAでも、「1品契約者が増えているのでは?」という仮説が浮かびます。
分析①:商品ラインAの契約品数シェア
実際に契約品数ごとのシェアを見てみると…
・1品契約の割合が最も多い
・しかもその割合が月を追うごとに増えている
ということが分かりました。
契約者数の母数も増えているため、「1品契約者数」も一緒に増えている状態です。
これが、出荷率低下の一因と考えられます。

分析②:なぜ1品契約が増えたのか?
ここで「そもそも、なぜ1品契約が増えているのか?」を深掘りします。
仮説としては、以下の2フェーズが関係していそうです。
①定期契約の開始時点
②契約継続の途中での解約
まず、新規契約時点での契約品数の傾向を可視化してみました。
結果として、近年は初回から1品で契約する人の割合が増えている一方で、2品以上で契約する人の割合は減ってきていることがわかりました。
さらに、面白いのがここからの比較です。
・全体の1品契約割合 > 初回の1品契約割合
・全体の4品契約割合 < 初回の4品契約割合
つまり「初回は複数品で契約していたのに、途中で解約して1品だけ残った」というパターンが想定されます。
分析③:商品別に定期契約状況をチェック
ここからは、商品単位での定期契約状況を精査していきました。
ステップごとの分析内容:
・商品別の定期契約人数・シェア → どの商品がよく契約されているかを把握
・初回契約時の品数別シェア→ 単品契約されやすい商品・複数契約されやすい商品を把握
・解約人数と解約率の算出→商品別に「解約されやすさ」を把握
(今回は解約者数のみで評価しましたが、今思えば「解約率」も見ておけばよかったと反省しています…!)
これらを通じて
・初回から契約されやすい商品
・契約後に解約されやすい商品
といった、注力すべき商品や見直すべき商品が特定できました。
分析まとめ
今回の分析では、以下のような構造が見えてきました。
・出荷率が下がっている
・契約者数の多い商品ラインで、1品契約が増加している
・その背景には「特定商品の解約」が起きている
・つまり、解約の防止が出荷率改善の鍵!
今後は「どの商品で解約が多いのか」「なぜ解約されているのか」に着目して、ピンポイントで対策を講じることが必要です。
このように、出荷率という“表の数字”の背後には、契約状況や解約の動きといった“裏の動き”が隠れていました。
「数字の先に、どんなストーリーがあるのか?」そう問いながら、仮説と検証を重ねていくことで、より納得感のある分析に近づいていくのだと実感したプロジェクトでした。