男性ロイヤル顧客は“商品部門A”がカギ?:小売ビジネスで見えた育成戦略~今いる男性顧客を読み解く~| 【連載アナリストブログ 第4章第2話】

目次
導入
こんにちは!
UNCOVER TRUTHでデータアナリストをしている清水です。
今回は、小売業における男性向けロイヤル顧客の育成をテーマにした分析事例をご紹介します。
ロイヤル顧客は全体の一部にすぎませんが、売上の大部分を支える存在です。
新規獲得に比べて維持コストが低く、長期的な利益や安定性をもたらします。
だからこそ、彼らを育成・維持することが事業成長のカギとなります。
そんなロイヤル顧客へ育成させるための分析を下記4話に分けて解説していきます。
<ラインナップ>
第1話 分析背景と全体の方針
第2話 現在のロイヤル顧客の理解
第3話 買い方の深掘り分析
第4話 商品の組み合わせの分析
第2話の今回は、女性と比較することで男性ロイヤル顧客の特徴を明らかにする分析についてご紹介します。
第2話:現在のロイヤル顧客の理解
手始めに、現在の男性ロイヤル顧客にフォーカスし、その特徴を徹底的に洗い出しました。
男女で比較することで、男性ならではのロイヤル顧客像を具体的に浮かび上がらせています。
1.基礎集計でつかむ男性ロイヤル顧客の全体像
まずは直近1年間の取引データをもとに、男性ロイヤル顧客のボリューム感や購入傾向を数値で把握しました。
具体的には以下の項目を集計しています。
・顧客数
・総取引回数
・ひとりあたり取引回数
・総取引金額
・ひとりあたり取引金額
・1商品あたり取引金額
その結果、男性は女性に比べて「1商品あたりの取引金額」が大きいことがわかりました。
ここから、男女で購入される商品の価格帯に違いがあるのではないかと仮説を立てました。
2.商品カテゴリー別の取引実績から仮説を検証
次に、先ほどの仮説を検証するために商品カテゴリー別の取引実績を確認しました。
この会社では、取り扱い商品を6つの部門に大別できます。
部門ごとに
・顧客数
・顧客シェア(その部門を購入している顧客の割合)
・1商品あたり取引金額
を整理し、男女で比較しました。
分析の結果
・男性は6部門すべてにおいて1商品あたり取引金額が高い
・特に高額商品が多い部門Aの顧客シェアが男性で高い
ことがわかり、男性は比較的高価格帯の商品を選ぶ傾向が強いと推測しました。
▼男女の違いからみる男性顧客の特徴

3.商品部門の横断利用傾向を探る
続いて、販売においていくつの商品部門を取引しているかを確認しました。
複数の部門をまたいで取引しているかどうかを把握することで、クロスセルを促す余地を探る意図です。
結果として
・ロイヤル顧客ほど複数の部門を取引している
・女性の方が男性より複数部門を取引している傾向が強い
ことがわかりました。
一方で男性は、特定の部門に集中する“コレクター的”な購買行動を示す傾向も見受けられました。

商品部門の組み合わせで捉えるロイヤル顧客の多様性
次に、どの部門をどのように組み合わせて購入しているかを分析しました。
(例:部門A単独、部門A+B、部門A+B+C など)
各組み合わせにおける
・購入人数
・割合
・LTV
・継続期間
を整理し、男女で比較したところ
・部門BとCの組み合わせは男女問わず多い
・部門Aを含む組み合わせは男性の方が多い
・部門Dを含む組み合わせは女性の方が多い
・部門Aを含む場合はLTVが特に高い(男性で顕著)
といった特徴が見えてきました。
部門Aは最初の基礎集計でも単価の差が顕著だった商品であり、分析のつながりを実感できる結果でした。
▼商品の組み合わせからみるロイヤル顧客の特徴

5.取引商品の詳細とブランドの傾向
ここからは具体的に、商品部門の組み合わせごとにどんな商品をどのくらい買っているかを詳しく見ていきました。
さらに、扱われているブランドにも注目し、
顧客の趣味・嗜好やブランドの方向性を探ることを目的としました。
例えば
・部門AとBを組み合わせた人の中での部門Aの購入回数
・全購入に占める部門Aの購入割合
・部門Aの商品単価
などを分析し、男女間で比較しました。
さらに靴のカテゴリーで例えるなら、ナイキやアディダスといったブランドごとの「色」を分析し、どのような趣味性を持つ顧客なのかを考察しました。
結果として
・どの組み合わせでも男性は部門Aの購入割合が女性より高い
・部門A+Bの組み合わせでの単価が最も高い
・男性では2部門の組み合わせの方が3部門の組み合わせよりブランドXの購入割合が高く、単価も高い
・部門Dで扱うブランドGは女性に好まれるが、男性では少ない
という傾向が見えました。
このことから、部門Aの中でもXブランドが男性顧客育成において重要な鍵を握ると考えられます。
▼商品ブランドからみるロイヤル顧客の特徴

分析のまとめと今後の展望
これまでの分析から、男性ロイヤル顧客の特徴として
・1商品あたりの金額が女性より大きい
・特に部門Aにおける単価が高い
・部門BとCは男女ともに買われやすい
・部門Dは女性に買われやすい
・男性の部門A×Bの組み合わせが高いLTVにつながりやすい
といったポイントが浮かび上がりました。
【分析報告を通じて】
これら一連の分析結果を報告し、概ね納得したお返事をいただきました。
そのうえで、次のようなご意見をいただきました。
・ブランドXにとどまらず、他部門へ広げていけないか
・部門Dを購入している顧客を、部門Aへクロスさせる施策を検討したい
といった意見をいただきました。
(ちなみに部門Dの購入者は過去の分析でもロイヤル化しにくい傾向がありました。)
第2話はここまで!
次回は、これらの課題をどう解決できるか、男性ロイヤル顧客の具体的な行動パターンをさらに深掘りしてご紹介していきます。
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この記事を書いた人
清水 貴仁(しみず たかひと)
コンサルティンググループ アナリストチーム
2022年にUNCOVER TRUTHに入社。
翌2023年にアナリストチームに参画。
CRM観点の顧客分析やKPIに基づくダッシュボードの作成などを担当。
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