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川添 隆に聞く!新時代を生きるための顧客データ活用とは?|セミナーレポート

この記事は、2023年1月25日に開催した「川添 隆に聞く!新時代を生きるための顧客データ活用とは?」のセミナーの一部抜粋とアーカイブ動画のご案内をしています。

事業会社に求められている新時代のマーケティングは、OMOやオムニチャネルと呼ばれて久しい、デジタルとリアル店舗を統合した新たな顧客体験の創出です。

今回は、店舗とデジタルコマースそれぞれのチャネル特性や顧客ニーズに合わせたデジタル活用を実践してきたメガネスーパーを展開する、株式会社ビジョナリーホールディングス CDO兼CIO川添隆氏をお迎えして、共に考える場を作りました。なお、今回はセミナー終了後に、当社UNCOVER TRUTHのイベントスペースにて、川添氏が店主をする交流と出会いの場「ZOE BAR」も開催しました。※登壇者のお話の内容は一部記事用に要約しています。

登壇者紹介

登壇者情報

テーマ|データの活用は手段であり目的ではない

川添隆に聞く!新時代を生きるための顧客データ活用とは?

小畑:様々なクライアントと取り組みをしていく中で「データを活用する」ということが、目的となってしまっているケースが多くあります。我々との取り組みのきっかけとして「顧客分析をしたい」「データ基盤を作りたい」というお話になるのですが「何故それをしたいのですか?」と伺ってみると、クライアント側で答えを持っていない場合が多くあります。

本来は、顧客に喜ばれるための独自性を作っていくときに、それの元となるデータがあるといいですよね。となるのだと考えているのですが、目的が定まっていない中でも「わが社もDXだ!」が先立ってしまっていることが多いのだと感じています。

とはいえ、我々も当初は、案件自体に取り組める嬉しさもあり「CDPの構築だ」「MAの連携だ」と取り組んでいたものの、クライアント側の目的が曖昧な中だと、具体的な成果を出していくところから遠いところに対して動いてしまっていると感じることもあり、反省しています。

川添さんには、このような手段と目的が入れ違いになっているケースや、それに対する助言等あれば伺えればと思います。

川添氏:私の意見の前に先にお聞きしたいのですが、小畑さんのところ(UNCOVER TRUTH)で、データを活用したいと依頼が来た場合「分析をしたい」「データの基盤をつくりたい」等のニーズに分かれるのですか?

小畑:2年ぐらい前に、CDPに関する専門書籍(外部リンク:ユーザー起点マーケティング実践ガイド)を出しました。その効果もあり「CDPを作りたい」「データ基盤さえあれば何かできるのでは?」となることが多く、大枠として「One to Oneのコミュニケーションをしたい」と言ったご依頼を多く受けるようになりました。

本来であれば「顧客とどのようなコミュニケーションを取ることで、どのような行動&態度変容を作りたいか?」という大事なところを決めておく必要があるのですが、その大事なところが抜けた状態でご依頼が来ることが多いです。

(とりあえず)データを活用しましょう。と言うのを社内で伝えることはあまりない

川添氏:もう一つ聞いていいですか?CDPを活用して上手くいっている所は、どういうことをやっているんですか?

小畑:分析で活用しているところは上手くいっていますね。もう少し言うと、テクニカルなことを上手くやっている会社より、しっかりとした顧客像を仮説で持っている会社の方が上手くいっている印象です。なぜかと言うと、自社のロイヤル顧客はこんな人のはずだと、実際のデータを見ながら、仮説とのズレや新たな発見をして、施策を変えていく。このような使い方の場合は、上手くいっている印象です。

川添氏:つまり仮説ありきってことですよね?そうですよね。当社の場合、施策検証や次の施策の企画のためにデータを作ることはしますけど、「(とりあえず)データを活用しましょう」とは私も伝えませんし、他のメンバーからも聞くことはありません。一般的に小売業の場合、まだ無い項目を何かしらの接点で取得することは可能な事が多いので、実験しながらデータを作れると思うんですよ。

例えば当社の場合、3日間の全社合宿の機会があります。ここでは中長期的な戦略を議論するのですが、2014年にはそれ以前に行っていたレンズとフレームのセット価格での販売から、レンズ自体を有料化に踏み切りました。

合宿終了までの最終決定までには、提案者はいくつかパターンを作って発表しました。普通の会社だと「どれが一番いい施策なのか」を議論によって絞りにいくと思います。一方で当社の場合は、議論しつくしても、これまでと大きな変革でどんな結果になるかが見えない場合は、一旦取り組んで検証してみましょうとなるんです。

さらに、その場で施策パターンごとに実施店舗を選定し、即座に共有・実行に移すことで、3日間ある合宿中にその施策についてのデータができる(溜まる)わけですよね。翌日なり最終日なりに検証して最終的にどれを全店舗で採用するか決定するんです。そこでの結果があって現在のレンズ有料化となっているんですよね。

データ活用は手段であり目的ではない

誰が何をするのか?活用したい人にデータが渡る必要がある

川添氏:そもそも、データを活用する以前に、見たいデータがすぐに見られるって重要ですよね。至極当たり前なのですが、EコマースやWEBサービスだと管理画面やGAでデータを見れば良いわけです。一方で基幹システムやPOSに関するデータの一部は、人の手を介さないと見られない状況があります。データはあるけど、すぐに見られない、依頼しないと見られない、データ出しを依頼しても望む内容が見られない。このような場合だと、判断が遅れますよね。

データの大前提として「このデータを活かして誰が何をしたいの?社内でデータ活用できる人(データを利益に変えられる人)は誰ですか?」を理解して、その人にデータが渡ることが重要です。施策や改善がどんどん回っていきそうな人にデータを提供できていないと、本来出るはずのアイディアが出ない可能性が高まります。一方で、実際にその人にデータがあれば、さらに施策を想像しやすくなります。

なので、優先順位として、まずは必要な人(やりたい人)にデータが渡ることが重要だと考えています。

小畑:そのようなアイディアが生まれる人に、どんな情報があればネタとして使えるのか。手段目的の議論の前に「誰が何に活用するのか?」というのが、とても重要なんですね。データ活用といった話をするとダッシュボードの話が出てきがちです。ダッシュボードの場合は「データを誰が使うのか?」を前提で作ることが多いです。例えば、経営レイヤーには経年のこんなデータ、施策運用側には日次のこんなデータといった具合です。

川添氏:データを活用するということは、データを観察するということでもあると言えます。そのためにダッシュボードを使うことがあるとは思いますけど、そのアラートから次のアクションの方針やアラートから想定できるアクションの範囲であれば決められるはずです。ただし、ダッシュボードの作り方によるでしょうが、より具体的な施策を考えるにはもう少し深いデータが必要なはずです。

ダッシュボードを構築していくのは「見るべき情報を絞りましょう。さらに見るにはここからドリルダウンできるようにしています。そうするためのデータの構造はどうしましょうか?」になるのかと思われます。とはいえ、実際にアクションを取る人にダッシュボードを用意したとしても、風景化して見なくなるデータも出てきたりしますよね。

小畑:ダッシュボードを使ってアクションとっている人って、ダッシュボードを施策結果の振り返りに利用しているとかですよね。アイディアのタネの話とかになると、アドホックな分析をしないとダメなのかなと。

テーマ|データ活用の目的は?

小畑:大きく分けると2つあると考えています。「顧客を理解したい」「施策の効果を上げたい」どちらが良いということはないのですが、顧客理解のために使っていったほうが、その後、柔軟にデータを活用できるかな?というイメージがあります。

例えば、10万円使ってくれたらシルバーランク、30万円使ってくれたらゴールドランクのようなステージで分けていくロイヤルティプログラムを持っている企業で良くあるのが「いくら使ってくれたから、そのランクになったという結果については理解している」ものの「どのような過程を経て、そのランクにたどり着いたのか?」をあまり理解していないケースがあります。

この場合「複数カテゴリを購入している顧客を見ると、そのきっかけとなる商品があったよね」とか「LINE登録やアプリDLをしてくれたことで、自社サービスへの来訪頻度があがって、その中のこのコンテンツに触れた顧客が、このランクにたどりつきやすい傾向があるよね」と言ったような、ストーリーが見えていないケースが多いんです。

今までの施策のどれが、何に効果があったのかを知ることで、良い悪いを判断していく。仮説を検証していくことにデータを使っていくことで顧客理解を深めていくのだと思いますが、データ活用について、このような使い方で顧客への理解が深まったなどの事例があれば教えてください。

データ活用の目的は?

今無いデータではなく、今見られるデータで意思決定する

川添氏:ストーリーとして顧客理解をするのはなかなか難しいですね。これに関しても「とりあえず」という無目的に、顧客理解のためにデータを使うということを私はやってきていないと思います。記憶の限りは。

私の中で顧客理解は、ある瞬間に『さあはじめますか』と言ってスタートすることではなく、日ごろの反応や施策のデータなどを見ながら日常的に続けていくことだと捉えています。社内で事業に関わる側としても、データは施策の効果測定、次の施策の立案、コスト・利益検証、損益の把握あたりに、使うことがほとんどのはずです。

一方で、他の企業の方からの相談では、「取得できていないデータ」を会議等で問われることがあるそうです。例えば「この商品が売れた理由はなんですか?」「Instagramはリーチが取れているのになんで売上につながらないの?」などのように、事実としてのデータが取得できないような、売上結果とユーザーのインサイトの掛け合わせを、突然その場で聞かれることがあるという声を良く聞きます。当社の場合は、投資が大きかったり事業全体に影響するような大きな意思決定であれば、このデータを探してくださいと戻すこともあります。また、施策や商品企画のためにアンケートを取得するなどはやっています。ただし、基本的には、その場にあるデータや、遅くとも数時間で手配できそうなデータを基に仮説立てをして意思決定するんですね。スピードの方が重要なので。

明らかに取得できなさそうだったりや、データ収集に大きな労力がかかりそうだったりするのに、それを準備してもらって意思決定をしようとすることは、ほぼないですね。「ファクトがあって、次の仮説(実施案)がたつなら実施してみよう。そこから結果がどうだったか」となっていきます。

小畑:それを聞くと、進め方の違いを感じますね。我々の場合、ウェブのデータを多く持っているパターンのクライアントとの取組みが多いんだなと感じました。例えば、F2転換する人としない人の違いって、行動データに顕著に出るんですね。それで、行動データの差分を考えるみたいな発想になるのだと思いました。川添さんのお話の方がより本質的に感じます。

業態や状況で、必要なデータや使い道が異なる

川添氏:ただし、これは業態や各部門や施策のフェーズよって全然違いますよね。当社の場合は店舗、店舗で獲得したコンタクトレンズの定期購入という順番で売上が高く、この2つでほとんどの売上が構成されています。

しかし、アパレル等のように顧客体験の中にどこかでデジタルの接点が登場するような、デジタル依存度が高い業態の場合は、デジタル側で取得できている行動データは重要になるはずです。どういう行動をすると購入に近くなるか?といったマジックナンバーを算出したりすることもあるでしょう。当社の場合は、現時点で商材✕ユーザー側の行動の中にデジタルが関与する余地が少ないのと、当社の提供する価値が対面で発揮しやすいといった観点で、行動データやデータからの顧客理解を社内で議論する機会がまだまだ少ないのです。

そういった背景もあって、デジタルの行動データを内包したようなCDPは構築できていません。今やったとしてもペイできる感じがしないです(笑)。しかし、顧客情報をいただいたり、施策につながるデータを付加していくことに対しては、全社で精力的に取り組んでいます。行動データはありませんが、眼鏡の問診や販売、購入時アンケートなどを通じて、顧客を理解できるようなCDPのようなものはあると言えるのかもしれません。それを活用して、店頭接客時の顧客ニーズをくみ取った紙のDMを自動発送する仕組みなども取り組んでいます。

良く聞く、ECと店舗の併用に対する施策も、通り一辺倒に「併用率を高るために何をするか?」という考え方よりは、まずは業種・業態・ブランドと顧客の粘着度(エンゲージメントみたいな)を判断した上で、ユーザー側の必然性からアプローチをとったほうが良いと思っています。仮に意図的に相互利用を促進しても、抜本的に変わることは少ないと思いますし、その前にお客様のペインを埋めていく施策を積み上げたほうが、結果的にチャネル関係なくサービスレベルが上がると捉えています。

小畑:OMOをやるためには、データ基盤が必要だみたいな話になりがちですけど、川添さんのビジネスだと、メディカルを主軸とした見せ方であれば、自分の目をちゃんと診てもらいたいからお店なんでしょうし、ECで無理やり売りにいくとかも違うんでしょうね。業種業態で違うというのは理解できます。

テーマ|データ活用におけるマネジメントの条件

分析を解釈するだけではなく、気づきを得て企画できる人材が重要

小畑:どの人にデータが渡れば意味を成すのか等のお話を踏まえて、組織体制や必要なスキルなども考慮していく必要があると思います。マネジメント側の立場から、この場合の条件等はありますか?

川添氏:データ活用だけの話ではなく、マネジメント側からは、各事業・担当の内部で事業の改善を自走かつ継続してほしいという思いがあります。とはいうものの、フェーズやチーム構成などの問題で改善が回っていない場合もあります。

例えば「CRM経由の売上を上げたいです!」といった手段から得られる結果目標を目的にすり替えてしまっていることがあったりします。そうすると、その場合の担当者は、施策の本数を増やしたり件名を変えたりする施策改善のみに注力してしまうわけです。そして、ある日「CRM施策の改善は続けているんですけど、頭打ちになっているんです」みたいな話になってしまう。この話は過去に寄稿もしています。<引用> 外部リンク:成果が伸びないときに勘違いしてやりがちなことと、実践したい5つの考え方――川添隆(コマースプロデューサー)

小畑さんのような外部に依頼するメリットとしては、「分析→解釈」を客観的かつベターな手段でサポートしてくれるところなんじゃないでしょうか。さらに、そこでの気付きも一定付加してくれますよね。

新しい取り組みだろうが改善だろうが、本来は「分析→解釈→発見(気づき)→企画→実行」という流れが必要だと考えています。

しかし、多くの担当者・チームは、分析して解釈した後にすぐ、アクションを起こしてしまう。解釈のみだと結果数値からの良し悪しくらいまでしか見えないと捉えています。もちろん、それでも良くすることはできるはずですが、改善幅に限界が出てきたり、ある週は実施したものを次の週は戻してみたり、またやってみたりという”行ったり来たり”が起きたりします。

求めているのは、解釈した状況を一歩引いて見た発見や気付きを言語化して、それを基に「どうやったらユーザーのペインを埋められるか、ほんのちょっと気持ちが上がるか?買いやすくなるか?」といった想像を具体的なアクションにつなげていく企て=企画のプロセスです。もちろん、全員が全員出来ることではないという理解ですが、事業やプロジェクトをリードするメンバーにはやってもらいたいことだと思っています。

小畑:なるほど。このようなファクトらしいな、みたいなことがあったとき、大体の会社の場合は「根拠をデータで示してください」となると思うんですが、川添さんのところではどうですか?

川添氏:「データで示してください」はありますし「お客様の声といった定性情報もなるべく定量化してくださいね」は必ずあります。

 
データ活用におけるマネジメントの条件

データを渡すに限らず、キーマンをおさえて動かしていく

小畑:ありがとうございます。ここまでで、マネジメントの条件についていくつか聞けたと思っています。どちらかと言うと「この人が企画をするべきだ!」というのを見つけるのがポイントになるんですかね?

例えば、我々もデータを分析して納品する時に、クライアント側に発見を膨らませてくれる人がいると、会議の場が盛り上がり、その気づきからその場でデータを深堀してみることも少なくありません。少し言い方は悪いかも知れませんが、勘と経験で頑張ってきた人がデータを見られるようになってくると、気付きから企画が進みやすくなっていくのかもしれません。それが誰なのか?をマネジメント側が掴んでおく必要があるということですね。

川添氏:よく「キーマンをおさえましょう」と話をするんです。キーマンと言うのは、企画を理解する人、発言力がある人、信頼が厚い人、チャレンジ心が旺盛な人など、何を推し進めたいかによっても捉え方は異なります。ただし、社内に影響力をもたらせるというのは共通しています。そういう人を見つけたら、「こういうデータがあって、もっとこうすると利益あがりそうじゃない?ムダが減りそうじゃない?」と、その人たちを説得したり、その気になってもらうのはとても重要です。

他社の色んな相談を聞いてわかることは、ECと店舗の間にボールが落ちている状況が頻発していることです。Googleマップを使って店舗にもECにも送客することは可能ですが、「誰が主幹としてやるのか?」について解がなく、見送りになったりしているようです。おそらく担当部門や担当者がそもそも無い、ないならないで「私がリードすることで双方に貢献する!」といった気概を持った人が不在なのでしょう。いわゆる縦割りの弊害ですが、こういう時は貢献するために行動できたり、新しいチャレンジを好むキーマンにアプローチすると良いですよね。

小畑:同じように見ても視点や目的が違う人がいるので、キーマンを抑えて、まずは試してみよう。なぜならスピードが重要だから。と言った会社としての規律というか仕組みがあることで、マネジメントができていくということですね。

レポートはここまでになります。詳細はぜひ動画にてご確認ください。

アーカイブ動画へのリンク

実際のセミナーは、より具体例を交えた解説も入っており、およそ1時間の内容となっていますので、詳細はぜひ動画にてご覧ください。

外部リンク:川添 隆に聞く!新時代を生きるための顧客データ活用とは?

UNCOVER TRUTHでは、引き続きCDPやCRMを主軸にデータ活用に関して皆さまのお役に立つコンテンツをお届けしてまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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