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CDPをOMOに活用するための条件|顧客接点をまたいでデータを繋げる顧客IDの重要性

この記事では、OMOに向けてCDPを活用する条件として、顧客接点のデータをつなげるために必要な顧客IDの重要性について書いています。

筆者が2021年2月に国内初のCDP専門書籍「ユーザー起点マーケティング実践ガイド(外部リンク)」を出版してから、CDPの構築方法(別記事:CDP構築時の主な流れと手順)やCDPの比較(別記事:自社に適したCDPツールの選び方)のようなCDPやCRMに関するご質問を多くいただくようになり、それらに応えらえるようにと前段のようなコンテンツを多く作成することが出来ました。普段からこのような率直なご質問をいただける環境があることを大変ありがたく感じています。

この記事では、筆者が普段からマーケターの方々と雑談する中で、実はよく質問されている「CDPさえ導入すればOMO(Online Merges with Offline)、オムニチャネルができるようになるんでしょ?」という内容にお答えしたいと思います。

結論から先に申し上げると、このようなご質問をいただいた場合「できません」とお答えしています。CDPを魔法の杖や箱のように捉えている方が、まだまだ多くいらっしゃるように感じています。正しくお伝えすると、CDPが本来のパワーを発揮するためには条件があります。そのことを説明するために、今回は具体的かつ典型的な相談事例をご紹介します。

多様化する顧客接点をまたいで、顧客データが繋がるかが重要

とある小売りスーパーがOMOに取り組まれるという相談事例です。

大まかに内容をまとめると「CDPを導入すれば、オンラインでもオフラインでも個客をリピーター化して囲い込みできるようになって、売り上げも上がりますよね?」という楽観的なご相談(依頼?)事例になります。

ここでは、OMOに向けた全体像を理解するために、小売りスーパーの現状の顧客接点について以下のようにまとめました。

【小売りスーパーの顧客接点一覧】

一見、多様化する顧客接点に対応すべく、オンラインとオフラインとで必要な準備がされているような感じを受けますが、上の表を見ると会員登録(=個人情報登録)が”ある接点”と”ない接点”があります。さらに、それぞれ都度、接点毎に個別に開発しているため、会員DB(データベース)も別れているとのことでした。

スーパーのような小売業であれば、OMOを実践する際に最も重要なデータソースは、オフラインである店舗での購買データです。残念ながら、ここでの現状は、ハウスカードは会員登録”なし”で、ただ配っているだけです。個人を特定するデータがないので、最も重要なデータソースが他のデータと繋がらずOMOに向けたデータとして活用することができません。

一部データが繋がりそうなのは「ECサイト」と「取り置き/宅配アプリ」でしょうか。メールアドレスや住所などをPK(プライマリーキー=同一人物特定の識別子:以下PK)にして名寄せすること位はできそうです。(サービス別にログインが違う使い勝手の悪さは、ここでは触れません)

それぞれの顧客接点のデータを繋ぐキーがないデータ環境では、今回の相談内容である、CDPを導入することでのオンラインとオフラインを融合した購買体験とコミュニケーションの最適化は「できない」のです。

顧客を特定するプライマリーキーを持つためにサービスを統合していく

このような状態の場合、CDPが本来のパワーを発揮するために、まずは顧客を特定するPKを作る必要があります。以下のような手順でサービスの統合を推進するのが理想的です。

手順①:店舗で買い物する顧客をIDで管理できるようにする

手順②:店舗会員とEC会員を同一IDで管理(統合)する

手順③:他オンラインサービスも同様に同一IDで管理(統合)する

サービスを横断する顧客IDの統合は、おおよそシステム開発が必要となり、さらには既存顧客に改めて登録の手間をかけることになります。そのため、時間とコストを充分に確保してプロジェクトを進める必要があります。

大がかりなシステム開発や顧客に再登録の手間をかけない手段もある

とはいえ、大がかりなシステム開発や既存顧客に再登録の手間をかけない手段もいくつか存在します。下記は一例になります。

LINEの活用

最近では、LINEで店舗のハウスカードを代用したり、ECサイトにLINE連携機能を導入するなどしてLINEのIDで顧客情報を統合する方法もとられています。ユーザーにとっても手間が少なく、店舗での勧誘オペレーションの手間も減らすことができます。

メールアドレスで連携

各サービスでメールアドレスを取得することで、メールアドレスをPKとして活用し、CDPで統合を行う方法です。

今回の相談事例のように、部分最適でシステムを個別に構築してきたような場合でも、使いやすい手段であると考えます。店舗のハウスカードをアプリ化し、少なくともメールアドレスだけでも登録してもらうことで、CDP側で店舗会員とEC会員の同一人物を名寄せし、オンラインとオフライン双方の購買データや行動(閲覧)データを統合管理することが可能になります。

このようなメールアドレス連携だけでも、個客ごとの購買履歴や閲覧履歴がわかるようになるため、例えば下記のような、1to1コミュニケーションの施策を実行できるようになります。

  • 店舗で購入した商品に合わせて、ECサイト上やメールでレコメンドをプッシュする。
  • ECサイト内の閲覧行動で興味のある商品やサービスを特定し、店舗で実施される該当商品のセールやイベント情報を対象者にピンポイントで配信する。

今回は小売のスーパーを例としました。ここまでの内容を、他人事ではないと感じる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

オンラインとオフラインの双方で顧客接点があり、多様化していく顧客接点に合わせてサービスを個別に立ち上げていくのは(よくツギハギシステムと言われます)、小売だけでなく、様々な業態でも該当するよくある課題のように感じています。

CDPは魔法の杖でも箱でもなく、一定の条件下で機能するツールだと言うことがお伝えできたのであれば幸いです。まずは、現状の顧客接点とシステム/情報資産を整理してみると、ご自分達がどこから手をつけるべきかが見えてくると思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。


この記事を書いた人

小畑 陽一
株式会社UNCOVER TRUTH
取締役COO(Chief Operating Officer)

music.jpやルナルナを手がけるエムティーアイ社出身。ソリューション事業責任者として、大手企業向けモバイルサイト構築ソリューションで、国内ナンバーワンのASPサービスを展開。2014年、取締役として株式会社UNCOVER TRUTHの取締役COOとして経営に参加。経営・事業戦略とマーケティングを管掌。 ad:tech Tokyo / Kyushu、宣伝会議、MarkeZine、Web担当者フォーラムなど講演活動多数。
著書:『ユーザー起点マーケティング実践ガイド』(CDP専門書籍)


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