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8月23日にトリドールホールディングス神谷氏をお招きし「UTマーケティング勉強会vol.2」を開催しました

「UTマーケティング勉強会」は、UNCOVER TRUTHが自社事業の枠を超えて多方面のプロフェッショナルをゲストスピーカーにお招きし、マーケティングに関する知見を共有する新たな試みです。第2回目のゲストスピーカーにはトリドールホールディングスの神谷氏をお迎えし、SNSとオフラインイベントを活用した「ファンベースマーケティング」をテーマにお話しいただきました。消費者のニーズが多様化・細分化する昨今、マーケティングの新たな打ち手である「ファン・コミュニティ」を構築するための方法と、それを盛り上げるための仕組みづくりについて、セミナーレポートでご紹介します。

ブランドとは、生活者の頭の中にあるもの

トリドールホールディングスを代表するブランド「丸亀製麺」のTwitter運用を中心に、デジタルを活用したマーケティング戦略を担う神谷氏。そのミッションはデジタルの領域に限らず、デジタルをきっかけに来店したお客様の体験までをフォローしてCX(カスタマーエクスペリエンス)を設計することです。「丸亀製麺」のTwitterフォロワー数は、神谷氏が入社した2018年4月時点の10万人弱から増加を続け、現在では30万人を突破して50万人を目指す規模になっています。

こうした成果を生んでいるのが、熱狂的なファンを育てる「ファンベースマーケティング」という手法です。同社では「すべてはお客様の喜びのために」という社是のもと、ファンを大切にすることで中長期的な売上や価値にインパクトを生み出していくファンベースマーケティングの取り組みに注力しています。

ファンは「企業やブランドが大切にしている価値を支持する人々」と定義することができますが、ブランドとは何でしょうか。神谷氏は「名前を聞いて多くの人々が頭の中に同じイメージを持つとしたら、それは企業のブランディングが伝わっている証拠。ブランドとは、生活者の頭の中作られているもの」であると説明します。

例えば皆さんの会社が公式のSNSアカウントを運用している場合、SNS担当者(いわゆる「中の人」)が突然会社を辞めたらどうなるでしょうか。運用が属人的になっており引き継ぎがきちんとできなければ、生活者の頭の中に一貫したイメージを届けるブランディングの続行が困難であることは想像に難くありません。

こうした点において企業のTwitter活用は諸刃の剣であるとも言えますが、従業員が自社のブランドをきちんと理解していれば、担当者が変わっても問題なく運用を続けることができるでしょう。

フォロワー数477%成長を実現した「丸亀製麺」のTwitterアカウント

このようなブランドの在り方を前提として、ファンの育成に成功しているのが丸亀製麺のTwitterアカウントです。一時的にフォロワーを増やすことができる広告施策には頼らず、2018年から2019年にかけて、右肩上がりで477%成長を実現しました。神谷氏はTwitterアカウントの運用を、以下の3つのフェーズに分けて展開しています。

  1. フォロワー数10万人まで:認知
  2. フォロワー数30万人まで:興味喚起
  3. フォロワー数30万人以上:来店につなげる

フォロワー数10万人までの「認知」のフェーズでは、丸亀製麺という名前を知ってもらうことに注力します。このフェーズでは予算が限られていることも多いため、実際に取り組んだのが「世の中のイベントをうまく活用する」という手法です。

神谷氏は当時盛り上がっていたサッカーのFIFAワールドカップに着目し、そこに「人それぞれ好きなうどんがある」という特徴を掛け合わせて、「自分が応援したいうどんに『いいね』 と『リツイート』で投票してうどんを戦わせる」というキャンペーンを実施。 実際 のワールドカップと同じく後半 戦へ向 かうにつれて盛り上がったことから、最終的には予算を確保し、優勝したうどんが抽選で無料になるインスタントウィンキャンペーンを展開しました。ただ単に世の中のイベントに便乗するのではなく、それを自社のブランドにうまく置き換える施策で、フォロワー数の増加につなげた事例です。

次に、フォロワー数10万人~30万人までの「興味喚起」のフェーズで重要なのは、実際の投稿内容やクリエイティブにこだわることによってお客様に喜んでもらい、丸亀製麺を身近に感じてもらうことです。そのために神谷氏は、丸亀製麺に行ったフォロワーがどのような投稿をしているのかを地道にウォッチしたり、同じメニューの複数パターンの写真をABテストしたりすることによって、お客様に喜んでもらえる投稿のパターンを研究したといいます。

そしてフォロワー数30万人以上になると、Twitterをきっかけに来店してもらい、実際の体験を楽しみながら拡散をしてもらうフェーズです。具体的には、来店のきっかけになりやすい季節商品について、全員当選のインスタントウィンキャンペーンなどを展開しました。ここでの特徴は、「認知」と「興味喚起」のフェーズでお客様との距離をきちんと縮めることができているため、キャンペーンが終了してもフォロワーが離れていかないという点です。また、当選チケットを丸亀製麺アプリから配信することによって「誰に当たったか」がTwitterアカウントと紐づいて可視化され、当選した人のフォロー継続率が高いということも明らかになりました。

デジタルからリアルへ

Twitterのフォロワー獲得が軌道に乗ると、次は「Twitterのフォロワーが本当に来店してくれているか」を知り、デジタルとリアルを結びつける仕掛けです。そのために丸亀製麺では以下の条件でファンイベントを告知し、参加者を募集しました。

  • 応募経路はTwitterのみ(応募期間は5日間)
  • 開催日は、一般的に集客しづらい2月の祝日(3連休の中日)
  • 交通費は自腹
  • プレスリリース前の情報(元情報)はTwitterのみで公開
  • 応募時に「丸亀製麺愛」を500字で記述してもらう

こうした厳しい条件にも関わらず、若年層を中心に全国から多数の応募がありました。また、応募書の「熱狂度(丸亀製麺に来店する頻度)」と「推奨度(周囲の人に丸亀製麺を薦める度合い)」を独自にスコアリングしたところ、応募者全体の20%がスコアリング100%を満たしていたといいます。当選者40名のうちら来れなかった人はたった1名で、参加者の中には神戸から夜行バスで上京した人もいるなど、Twitterのフォロワーの中に熱いファンの存在を確かめることができました。

SNSきっかけのコミュニケーションが店舗で生まれる仕組みづくり

こうした取り組みから見えてきたフォロワーの声は、マーケティングだけでなく広報やCSR、店舗などの各部門が必要とする情報に可視化することも重要です。実際にSNS上でどんな投稿がされているのかを共有することによって、SNS施策の社内重要性を高めることができます。

最後に神谷氏は成果について「量と質の両方をKPIに設定することが必要」と説明しました。ただしフォロワー数が来店に結びついているかどうかを100%可視化することは難しいため、量は「フォロワー数のうちの来店可能数」、質は「エンゲージメント率(インプレッションに対するいいねやリツイート数)がどれだけ来店回数に相関しているか」などを大まかに把握することから始め、まずは店舗においてSNSきっかけのコミュニケーションが生まれるような仕組みを作ることが重要だと話しました。


UNCOVER TRUTHは今後も、自社事業の枠を超えて「UTマーケティング勉強会」を開催し、Webビジネスの成長を目指す企業・ご担当者様を支援してまいります。

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