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KPIツリーを駆使したLTV改善~リピーターへの進化を読み解く分析~| 【連載アナリストブログ 第2章第4話】

UNCOVER TRUTHでアナリスト歴2年目の清水がデータ活用事例を紹介する連載ブログ:この記事では某オンラインショッピングサイトを取り扱う企業様と行った、KPIツリーに基づいた課題の解明、課題改善のための分析(ウェブログを活用したF2転換分析)について4回にわたり紹介します。これを読んでいただければ、課題の明確化から、分析のやり方までご理解いただけると思うので是非最後までご覧ください!

本ブログを開いていただきありがとうございます!
UNCOVER TRUTHでアナリスト歴2年目の清水です。
第4話はF2転換分析についてご紹介します!

<ラインナップ>
第1話 KPIツリーの設計
第2話 目標の設定
第3話 定点観測と課題認識
第4話 課題改善分析~F2転換分析~

<F2転換分析>

定点観測から、F2転換「率」に課題があることが分かってきました。
この課題をデータから解決すべく、データ分析を行いました。

どんな分析をしたの…?

F2転換した顧客の特徴を把握する分析を行いました。
特徴を把握することで、F2転換率改善施策のアイデアまで検討しています。

どのように分析したの…?

今回はウェブログを用いて分析を行いました。

ウェブログって…?


ウェブログとは、ウェブサイトへのアクセス情報です。
いつ、だれが、どこからきて、どのページを閲覧し、どのページで訪問を終えたかなどを記録したデータで、ウェブ上での顧客の動きを把握できます。
いわばウェブ上の行動日記です。
これにより、サイト訪問から購入までの変遷をたどることができます。

また、購入の翌日や購入の前日など、日をまたいで分析をすることにより、「その訪問で何をさせるべきか?」だけではなく、「いつその行動をさせるべきか?」という「期間」についての示唆も得ることができます。

ウェブログを用いた分析でできること
分析の流れは…?

★分析STEP1:分析設計の検討
まずどのように分析を行うかの分析設計をしていきました。

■目的設定
どの目的で分析を進めるかを検討しました。
今回は「F1止まり顧客とF2転換顧客の差を比較し、F2転換に寄与する変数を探る」こととしました。

■定義の検討
分析を行うにあたってあいまいなことがないように、まず定義を検討していきました。
決定した定義は以下の通りです。
・対象期間:2023年6月1日~2024年3月31日
・分析対象者:2023年7月1日~2023年12月31日に生涯で初めての購入をした顧客
・顧客区分
 F2転換顧客…初回購入から90日以内に2回目の購入をした顧客
 F1止まり顧客…初回購入から90日以内に2回目の購入をしていない顧客
・タイミング
 F1前…初回購入までの過去30日間
 F1日…初回購入の日
 F1後…初回購入から2回目の購入日までの期間
 F2日…2回目の購入日

頭悩ましポイント

・顧客区分と分析対象期間の決め方
本来であれば、F2転換顧客をKPIツリーの定義に合わせて「初回購入から1年以内に2回目の購入をした顧客」とするべきです。
しかし…今回分析できるウェブ行動データを取得できた期間は2023年6月から2024年3月でした。
つまり、分析できるデータは1年分もありません。
したがってKPIツリーの定義では、正しくF2転換顧客者を選定できません。
そこで今回はこの期間で最適なF2転換条件や分析対象期間をデータを用いて検討しました。


検討材料1:初回購入までの期間
まず分析期間のスタート日を決めるため、初回購入までの期間を確認しました。
初めてサイトを訪問してからどれくらいの期間で購入に至るのかを見てみると、約90%が30日以内に初回購入をしていることが分かりました。
このことから、初回購入前の行動を把握するためには、30日前までのデータがあれば問題がないと判断しました。
そのため、データが取得できている2023年6月1日の1カ月後、2023年7月1日以降に初回購入をした顧客を対象者としました。

検討材料2:F2転換までの期間
次にKPIツリーだと「1年以内」にあたるF2転換までの期間を決めるために、初回購入から2回目の購入までの期間を確認しました。
初回購入からF2転換までの日数を見てみると、90日以内に2回目の購入をする顧客が約75%いることが分かりました。

検討材料3:Web行動がとれる日までの猶予期間
2023年7月1日以降に初回購入した顧客を対象者とし、今回定義した条件でF2転換顧客を計算すると、初回購入によってF2転換までの猶予期間が異なることが分かります。
例えば、2023年7月に初回購入をした顧客は、2023年9月までの3カ月間(厳密には90日間)F2転換までの猶予があります。
それに対し、2024年2月に初回購入をした顧客は、2024年3月までの2カ月間(厳密には60日未満)F2転換までの猶予しかありません。
定義はしたものの、実際は条件が異なってしまっています。
これでは、正しい分析ができません。

期間の差

そこで、対象者を2023年12月31日までに初回購入をした顧客としました。
これにより、すべての顧客に90日のF2転換猶予を与えることができ、同じ条件で分析ができるようになりました。
頭悩ましポイントは無事解消されました!

分析定義

■分析内容
目的を達成するための具体的な分析内容を検討しました。
F2転換顧客はどんな行動をとるかの仮説を立てながら、分析内容を考えていきました。

分析① 全体集計:全期間におけるF2転換状況を把握
分析② 期間別F2転換:月ごとにF2転換状況を把握
分析③ 転換日数:F2転換顧客のF1からF2までの間隔を把握
分析④ 再訪までの日数:F2転換顧客が購入日から何日以内に再訪するかを把握
分析⑤ タイミング別行動量:F2転換顧客のサイト内での行動(ページ閲覧やカート追加など)をタイミング別に把握
分析⑥ 閲覧コンテンツ:F2転換顧客がサイト内で閲覧しているコンテンツ(ページ)をタイミング別に把握

分析の流れ

分析No.が大きくなるにつれて、分析の粒度を細かくしています。
分析①は全体の顧客に対して集計していたのに対し、分析③からはF2転換顧客に絞っています。
またF2転換顧客を見ていても、分析④ではサイト訪問までを、分析⑤ではサイト内の行動を、分析⑥では具体的なページを確認するという風に徐々に細かくなっていっています。
このように、まず全体を把握し、そこから特筆すべき事項の深堀をしていくようにしています。
こうすることで、目先のことだけにとらわれない分析をすることができます。
いわゆる「木を見て森を見ずの状態」を防げます。

木を見て森を見ず状態

例えば毎月思ったように貯金ができないという課題があり、その改善方法を考えたいとします。
そのために支出を把握することにしました。
①支出を食費や娯楽費などに分類し、全支出に占める割合を調べたところ、食費が50%、娯楽費が5%を占めることが分かりました。
②食費の内訳を見てみると、ひとり飲みでの出費が50%を占めることが分かりました。
③娯楽費の内訳を見てみると、推し活での出費が60%を占めることが分かりました。
この結果から、支出に最も影響を与えているのは全支出の中で最も比率の高い食費で、その中でもひとり飲みの割合が高いということが分かります。
そのため、ひとり飲みを控えることが最も効果的な改善アクションだと導くことができます。
しかし①②の過程を踏まず③だけを見てしまうと、効果的な改善アクションは推し活を控えることだと導いてしまいます。
推し活を控えることで多少の支出削減にはなりますが、そこまで大きく貯金額を増やすことはできないでしょう。
つまり真の問題を解決できていません。
上記の例は少し現実離れした例えですが、細かい点を見すぎてしまうことで、課題の本質を捉えにくくなってしまいます。
逆に言うと、全体から見ることで、課題の本質を捉え、根本的解決につながりやすくなります。

分析設計例

★分析STEP2:分析設計にあわせたデータの成型(データマート作成)
分析設計の検討の後は、分析に合ったデータマートの作成を行いました。
今回はウェブログを用いた分析ということで、購買データとGA4(Google Analytics 4)を組み合わせたデータマートを作成しました。

■購買データ
購入日の差分からF2転換顧客なのか、F1止まり顧客なのかを把握

■GA4
・行動発生時刻
顧客が「いつ」アクションしたのかを把握します。
前回の訪問からの差を見ることで、前の行動から今の行動までの間隔を確認しました。
・ページURL
顧客が「どこで」アクションしたのかを把握します。
前のページもみることで、どのページからどのページに行ったのかの遷移を確認しました。
さらに、ページURLをある条件でグルーピングすることで、個別のページではなく、商品詳細ページやカートページ、特集ページなどのページグループ単位(コンテンツ)での確認ができます。

これら二つのテーブル同士を結合し、データを成形していきました。

データマート設計例

★分析STEP3:データの可視化
データマートが完成したら、データの可視化を行いました。
分析設計を基に可視化を行います。
また、仮説と違う点や特徴的な点など気になるポイントは深堀していきました。

例えば、タイミング別の行動量を見たとき、F2転換顧客はF1前(初回購入をする前)では平均3.3回訪問することが分かりました。
3〜4回商品を検討し、購入に至るということです。
ここから
・平均は3.3回だが、分布(ばらつき)はどうか?
・何回の検討で初回購入してもらうのがよいのか?
が気になりました。

そこで、初回購入までの訪問回数別の分布や初回購入までの訪問回数別のF2転換率を可視化しました。
その結果、3回検討し購入に至る顧客が多いことや、初回購入までの訪問回数が増えるとF2転換率が上がることが分かりました。
またここから
・どんなページを見ているのか?
が気になりました。

そこで、コンテンツ別のF2転換率や接触回数(PV数)を可視化しました。
その結果「コーディネート」コンテンツがF2転換に効くコンテンツだと分かりました。
その一方、接触率は低いことが分かりました。

タイミング別行動量
訪問回数別人数
検討期間別F2転換率
コンテンツ別接触量
コンテンツ別F2転換率

ここまで可視化できると、原因と改善アイデアの検討がしやすくなります。
具体的には、F2転換させるためには
・一度だけで決めず、複数回訪問してから初回購入してもらうこと
・検討する際にはコーディネートコンテンツに接触してもらうこと
が必要で、現状できていない。
改善のために、コーディネートコンテンツを回遊できるようなページ設計にすることが必要と考えることができます。

★分析STEP5:レポーティング
最後に、分析した内容を資料にまとめていきました。

構成1:与件の整理…改めて分析の目的や定義などを整理しました。
・分析背景
 分析をすることとなった経緯をまとめました。
 今回は定点観測から、F2転換に課題があることが分かっています。
・分析目的
 分析をする目的をまとめました。
 今回はF2転換した顧客の行動を把握することです。
・分析定義
 集計期間や対象者などの定義を整理しました。
 前述の顧客区分やタイミングなどです。

構成2:分析結果
分析の結果を順序だてて整理しました。
まず全体を、ページを重ねるにつれて細かいポイントを見ていくという構成です。
また最後に、分析結果を数スライドでまとめたサマリーページも用意しました。

構成3:改善アイデア
今回の分析結果から、F2転換改善に向けた施策アイデアやさらなる分析アイデアをまとめました。

施策アイデアって…?

施策アイデアは大きく2つあると考えます。

・ウェブ改善
サイトに訪問したユーザーに良質な購入体験をしてもらうために、ページ内コンテンツの改善アイデアを出していきました。
コンテンツの配置場所の変更や、CV貢献の高いコンテンツ(今回はコーディネート)の露出量増加などです。

・メール配信
深堀の中で、購入後早いタイミングで再訪してもらうことが大事だと分かりました。
そこで最適なタイミングで、最適な内容のメールを配信することで、早期の再訪が促せるのではないかと考えました。
いつ、どのようなメールを行うかのシナリオを考えていきました。
今回はメール配信を想定しましたが、LINEも有効であると思います。

・分析アイデア
「どんな顧客なのか?」をさらに明らかにする分析アイデアです。
F1時の購入商品別F2転換の分析や、F1時購入商品とF2時購入商品の組み合わせ分析などをすることにより、商品単位でのF2転換状況を把握することができます。

今後は顧客の解像度を上げる分析と、それに基づいた施策を早いサイクルで実施していき、F2転換率向上に一役買いたいと考えています。

全4回にわたり、KPIツリーを基にした現状把握と、課題を解決するための分析事例をご紹介しました。この記事が皆様のマーケティング活動の一助になれば幸いです。

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