「濃いデータ」なくして、LTVは生まれない。UNCOVER TRUTH 小畑陽一が解き明かす、新規事業と「価値交換ループ」【大丸松坂屋百貨店 対談レポート】

新規事業と顧客データ活用。多くの企業でこの2つは別の部署、別の会議で語られています。しかしUNCOVER TRUTHは、この2つを同じループの上にあるものとして捉えてきました。
新規事業でつくった顧客接点から「濃いデータ」が取れる。そのデータで顧客理解が深まる。深まった理解が、一人ひとりに合った体験を可能にし、LTVとして返ってくる——弊社が「価値交換ループ」と呼んでいる考え方です。
2026年7月28日(火)〜31日(金)に開催されたオンラインカンファレンス「Marketing LEADERS 100」(主催:Expert Partners Marketing)のDay3(7月30日)にて、弊社UNCOVER TRUTH 取締役COOの小畑陽一が登壇。J.フロント リテイリング株式会社/大丸松坂屋百貨店・XENOZ 兼務出向の島袋孝一氏をお迎えし、300年・400年続く百貨店の新規事業を題材に、このループが実際にどう回りはじめているのかを読み解きました。
本記事では、小畑が語った「LTVの手段と目的」「濃いデータ」「価値交換ループ」という3つの視点を軸に、セッションの内容をレポートします。
*本セッションの内容は、2026年7月30日時点の情報となります。

目次
UNCOVER TRUTHが最初に置いた問い:「新規事業は、既存事業に何を返すのか」
新規事業の話は、往々にして「何を立ち上げたか」の紹介で終わります。しかし小畑がこのセッションで一貫して問い続けたのは、その事業が本業に何を返すのかでした。
返るものは売上だけではありません。LTV、濃い顧客接点、濃いデータ。この3つが返ってくる設計になっているかどうかが、新規事業の本当の評価軸になる——これがセッションを貫く補助線です。
その視点で、大丸松坂屋百貨店の取り組みを見ていきます。
起点はコロナ禍。「時間と場所の制約」を克服するために生まれた9つの事業
大丸は1717年、松坂屋は1611年創業。2007年のJ.フロント リテイリング設立による経営統合、2010年の両社合併を経て、現在は全国主要都市に大丸・松坂屋を15店舗展開しています。その老舗百貨店が新規事業に踏み出した起点は、2020年の緊急事態宣言でした。
店舗休業により、文字通り「手も足も出ない」状況が続きました。理由はシンプルで、お客様との接点がほぼ店頭だったからです。営業時間という「時間の制約」と、店舗という「場所の制約」を克服しなければ未来はない——その危機感から、タッチポイントのオンライン化が始まりました。
顧客接点が単線だったことがそのまま事業リスクになった。ここが、以降のすべての話の起点になります。

大丸松坂屋百貨店DX推進部は、この5年で9つの新規事業を立ち上げました。ファッションサブスク、冷凍グルメサブスク、デパートコスメメディア&EC、アート・メディア&EC、メタバース、VTuber、ショールーミング店舗、心と思考のセルフケアサロン、そしてインフルエンサー事業——いずれも「時間と場所の制約を克服し、店舗に依存しすぎないビジネスをつくる」というミッションのもとに立ち上がったものです。

このうちセッションで深掘りしたのは「インフルエンサー事業」と「メタバース/XR領域」。百貨店がやっていると聞いて、多くの人が意外に思う2つです。
「お店起点」ではなく「生活者起点」。フォロワー40万超のアカウントが生まれた理由
インフルエンサー事業では、自社SNSアカウントの開発と、企業・自治体のSNSアカウント開発支援(プロデュース)の両方を行っていました。
代表的な自社アカウントは2つ。WAZA Studioは日本の伝統工芸の技や美しさを再解釈して世界に発信するアカウントで、2025年5月に運用を開始し、開設1か月で総フォロワー5万を達成。その後40万超まで伸び、総再生回数は1.7億回に達しています。おかたべは「オフィスでお菓子を食べすぎてしまう会社員」というコンセプトから始まり、その後「非言語コント」でエンタメ動画を制作するアカウントへ。TikTokフォロワーは21万超、YouTubeは投稿開始から3か月で登録者10万を達成し、37万超まで伸びています。SNS総再生回数は7億回を超えています(数値はいずれも登壇資料時点)。


小畑がここで確認したのは、フォロワー数ではありませんでした。どちらも「百貨店が扱う商品」を紹介するアカウントではない、という一点です。
「百貨店で扱っているようなスイーツショップを紹介するアカウント、WAZA Studioなら工芸品やアートを紹介するアカウント——そう思われがちなんですが、僕らがやっているのは全くそうではない」と島袋氏。お店起点ではなく、生活者起点。お客様が知りたい・見たいものの側に振り切っています。
理由は事業の立ち上げ方そのものにありました。リアルなビジネスとは別軸でポートフォリオを立てるという思想で始まっているため、あえて店舗の営業とは切り離して運営してきたのです。
結果として、外部企業からの相談が集まりはじめます。講演当時は、他業界のSNSアカウント運用も受託していました。B2Cのメディア運営で培った知見を、B2B・B2Gへ提供する新規事業へと発展した形です。店舗に依存しない接点をつくったことが、そのまま新しい収益源になっていました。
「データだけでは意味がない」——小畑が売場出身メンバーに反応した理由
運営メンバーの構成もユニークです。映像制作出身の中途入社者と、百貨店プロパーの人材がおよそ半々。後者にはVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)や売場運営を担当していた人間が含まれます。
「リアルなお店でどう表現するかを、データというよりは売場のリアクションを見ながらやってきた人たち。どんなコンテンツがお客様に響くのかを肌で感じている」(島袋氏)
そこに、1投稿ごとにSNSアナリティクスを確認し、一度編集が終わった動画をもう1回作り直すレベルで再編集するPDCAが組み合わさります。
データ分析を本業とする小畑が、この構成に強く反応しました。
「うちのお客様でも、マーケチームの人が全員まず店舗に立つという会社があります。分析したデータの結果の解釈が、お店の中が色づいて見えてくるかどうかで変わる。データだけでは意味がないんだと改めて思いました」
数字を出すことと、数字を解釈することは別の仕事である。弊社が分析支援の現場で最も重視している線引きが、ここで確認されました。
百貨店に行く理由を、もう一つ増やす。XRホラー「迷界デパート」
もう一つの新規事業がメタバース/XR領域です。セッションでは、大丸東京店で開催されたXRホラー「迷界デパート」(〜2026年8月11日)が紹介されました。ゴーグルを装着し、4人が同時に、隣にプレイヤーがいる感覚のまま体験できるコンテンツです。

このセッションの一つの山場が、実際に体験した小畑の感想でした。
「そもそも百貨店に行く理由に『エンタメをしに行こう』と考えたことがなかったんです。でも体験し終わった後に気づいた。百貨店を利用する理由が、自分の中に1個増えたんだって」
百貨店といえば洋服やデパ地下、コスメ。その枠の外側に来店理由をつくったことに価値がある、という指摘です。来店理由が1つ増えることは、顧客接点が1つ増えることであり、そこから取れるデータが1種類増えることでもあります。
島袋氏はこれを「屋上遊園地の現代版」と表現します。かつて百貨店の屋上に遊園地があったように、時間を消費してもらう場としての機能はもともと百貨店が持っていたもの。それをXRという形で現代化しているにすぎない、という整理です。
こうした体験は、実は顧客データの循環と地続きです。J.フロント リテイリングはグループ横断の統合データ基盤を構築しており、大丸松坂屋百貨店のアプリ会員数は2024年度末時点で264万人(統合報告書2025)。アプリを高額利用しているお客様を外商顧客向け催事に招待するなど、新規の体験がきっかけで大丸・松坂屋を知るパターンもあれば、既存のお客様が新しい体験をして関係が深まるパターンもあるという循環づくりが進んでいます。

ただし島袋氏は、現在地についても包み隠しませんでした。「全部がつながっているわけではない」。体験に参加した人としていない人でLTVがどう変わるかという厳密な分析も、まだこれからのテーマだと語ります。ダッシュボードでの可視化は進めているものの、データを解釈するプロセスだけは自社では完結しない——この認識が、後半の議論につながっていきます。
【UNCOVER TRUTHの分析事例】隣接2館の「両使い」顧客を、弊社はこう解き明かした
セッション後半は、弊社が実際に手がけた分析事例へ。
きっかけは、心斎橋で大丸とPARCOを隣接させる出店が進んでいた時期にいただいた依頼でした。「両館を行き来するお客様は本当にいるのか、そこに事業価値はあるのか」。答えるべき問いはこれです。
弊社が選んだアプローチは、すでに松坂屋とPARCOが隣り合っている名古屋・矢場町エリアの顧客データで、その仮説を先に検証するというものでした。まだ存在しない心斎橋の未来を、すでに存在する名古屋から読む。ここが分析設計の出発点です。
*以下、分析結果の実数値は非公開とし、相対比較(指数・倍率)で記載しています。

弊社が最初に変えたのは「集計の単位」
この分析で弊社が置いた前提は、次の3つです。
- 館単位ではなく、顧客単位でセグメントを切り直す——「百貨店のみ」「PARCOのみ」「両方に登録(いずれかで購買)」「両方に登録(両方で購買)」の4区分。館ごとの売上を足し合わせている限り、「両使い」という顧客像はいつまでも見えてきません
- 「同日購買」という単位でカテゴリを掛け合わせる——同じ日に、隣同士の建物で何と何が一緒に買われたか。館をまたいだ買い物を1つの行動として捉え直します
- 片方だけの顧客と両使い顧客で、それぞれランキングをつくって順位の差分を見る——絶対値ではなく差分を見ることで、「両使いを生んでいる要因」を特定します
数字を集計する前に、どの単位で切れば意思決定に効くかを決める。弊社が最も時間をかけるのはここです。
1. 年代でブリッジが起きている
PARCOのみの利用者は20代が突出したボリュームゾーン。百貨店のみの利用者は50代をピークに60〜70代まで厚く分布します。一方で両方に登録している顧客の分布は30〜50代に山ができており、2館が隣接することで、若い頃はPARCO、やがて両方を使い、年齢とともに百貨店へ、というスムーズな顧客の流れができていました。
2. 両館で買う顧客は、来店回数も客単価も2倍以上
3か月間のセグメント別データは明快でした。以下は「百貨店のみ」を100とした指数です。
| セグメント | 平均来店回数 | 平均購買回数 | 客単価 |
|---|---|---|---|
| 百貨店のみ | 100 | 100 | 100 |
| PARCOのみ | 62 | 58 | 96 |
| 両方に登録(いずれかで購買) | 103 | 102 | 107 |
| 両方に登録(両方で購買) | 215 | 221 | 238 |
両館で実際に買い物をしている顧客は、来店回数・購買回数・客単価のいずれも2倍以上。注目すべきは、「両方に登録しているが片方でしか買っていない」層が、「百貨店のみ」の層とほとんど変わらないことです。登録してもらうことではなく、両方で買ってもらうことが価値になる。セグメントを4つに割ったからこそ見えた線引きでした。

3. 「両使い」顧客だけに強いブランドを、順位の差分から見つける
とりわけ示唆的だったのが、同日購買のクロス分析です。PARCOの商品カテゴリと百貨店の商品カテゴリを掛け合わせたところ、PARCOと最も買い合わせが多いのは「百貨店の食品カテゴリ」。婦人服や身の回り品といったファッション関連の組み合わせも相性が良いことが分かりました。
さらに、PARCO購買者が同日に百貨店で買っているブランドをランキング化すると、片方の店舗だけで見れば下位に埋もれていたブランドが、両使い顧客に限ると一気に上位へ跳ね上がる。同様の動きが複数のブランドで確認できました。
館単体の売上ランキングを見ている限り、これらのブランドは「その他」に埋もれています。しかし顧客単位・同日単位で切り直すと、2つの館を引き合わせる力を持つブランドとして浮かび上がる。どの館に投資し、どの館を回遊の起点に置くか——館の売上表からは絶対に出てこない判断材料です。

数字の先にある「打ち手」まで、一緒に考える
コロナ禍という時期特有の買い合わせも見えました。PARCOで上質なルームウェアを買った人が、そのまま松坂屋の「ごちそうパラダイス」で食材を買っていく。自宅でいつもより少し贅沢な時間を過ごすための組み合わせです。
弊社の仕事は、この発見を出して終わりではありません。
「じゃあ、PARCOで上質なルームウェアを買った人には、そのレジで松坂屋の『ごちそうパラダイス』のクーポンを渡す。逆に、デパ地下で食材を買った人にはPARCOのルームウェアのクーポンを渡す。それだけで動線はもっと強くなるんじゃないか。そんな会話をしながら分析させてもらいました」(小畑)
買い合わせのパターンが特定できれば、どのレジで、誰に、何のクーポンを渡すかまで具体化できます。お客様にとって心地よい買い物体験と、その買い物の後の生活のイメージをどう発信していくか。そこまで踏み込んだ結果として、LTVが生まれる。
手段と目的を取り違えない。UNCOVER TRUTHがLTVを「目的」の側に置く理由
ここから小畑は、議論の前提そのものに切り込みます。
マーケティングの議論は、いつも「手段」の側に寄りすぎている。AI活用、データ分析、OMO、CDP、MA、CRM、パーソナライズ、ロイヤルティプログラム——支援会社が語るのは、たいていこの側です。しかし目的はあくまで「ずっと愛され、選ばれるLTV経営の実現」です。
「迷界デパートというエンタメをやっているけれど、それも結局はずっと愛されて選ばれるためにやっているわけですよね」(小畑)

その上で弊社が提示しているのが、手段を3層で積み上げるという整理です。
- 顧客理解に資するデータをかき集める(ユーザー調査、カスタマージャーニー、広告、SNS活用)
- コミュニケーション設計のための顧客理解(CDP、データ分析、顧客理解、MA)
- 1to1に向けた高度化にチャレンジする(CRM、OMO、ロイヤルティプログラム、AI活用、ハイパーパーソナライズ)
多くのプロジェクトが行き詰まるのは、1層目を飛ばして3層目から始めてしまうからです。CDPを入れてもパーソナライズが動かないという相談を弊社が受け続けているのも、この順番の問題です。

島袋氏は、この整理に対して自社の現在地を率直に語りました。
「今、大丸・松坂屋のアプリやWebサイトでは、まだできていないことはいっぱいある」
小畑が「外商は、人の心と時間を使ってパーソナライズしている領域ですよね」と水を向けると、島袋氏の答えはこうです。現在の百貨店の売上を支えているのは外商とインバウンドであり、そこではかなりの度合いでパーソナライズが実現できている。それをデータとAIの活用によって、対象レイヤーを広げ、より多くのお客様に届けていくことが次のテーマだと言います。
外商という「人力のハイパーパーソナライズ」が、すでに答えの形を示している。それをデータで再現し、規模を広げる。これは百貨店に限らず、あらゆる業種で成り立つ構図です。
UNCOVER TRUTHが言う「濃いデータ」とは何か
3層の1層目、「顧客理解に資するデータ」。ここで弊社が使っているのが「濃いデータ」という言葉です。
前提にあるのは、商品を購入する理由そのものが多様化しているという認識。おいしい、時短、安心・安全、スペックといった従来型の理由に加えて、友達のおすすめ、推し活、バズってる、おしゃれ、アゲ——理由は無数にあります。これを理解せずに商品スペック押しのコミュニケーションをした瞬間に終わる、と小畑は言います。

例として挙げたのは、レシピアプリです。多くの食品メーカーが自社のレシピアプリを持ち、「時短メニュー」「レンチンレシピ」「子ども向け料理」「ダイエット」といったカテゴリカットでレシピを並べています。あるユーザーが検索し、オムライスのレシピを開いた。
ここで手元に残る事実は、「オムライスを検索して開いた」という結果だけです。
その人がオムライスを好きなのかどうかは分かりません。自分のために作るのか、誰かのために作るのかも分かりません。つまり、検索という行動は取れているのに、その行動の文脈・背景・目的が何ひとつ分かっていない。
「裏側には、たとえば小さいお子さんがサッカーや野球をやっていて、育ち盛りだから栄養価の高いものを探している、という背景があるかもしれない。その利用理由を知るために、どんなデータを取らなければいけないんだっけ、という話です」(小畑)

必要なのは、レシピのカテゴリではありません。家族構成、ライフイベント、食材ストック、生活リズム、バイタルデータ——利用理由の側に手が届く情報です。これが弊社の言う「濃いデータ」です。

重要なのは、濃いデータは「取ろうと設計しないと取れない」ということです。既存のログを後から分析しても、そこに文脈は入っていません。どの接点で、何を、どう聞くか——設計の段階から関わる必要がある。弊社がデジタル接点の設計そのものを支援領域に含めているのは、この理由からです。
商品軸ではなく、顧客軸。これは百貨店でも同じで、「今なら『涼みに来た』も立派な来店理由になる」と小畑。買うことだけが来店理由ではありません。
アンケートでは出てこないインサイトを、どう理解するか。ここが今後の競争軸になるという点で、2人の見解は一致していました。
すべては「価値交換ループ」に集約される
セッションの締めくくりとして小畑が示したのが、弊社が提唱する「価値交換ループ」です。ここまでの話——新規事業、来店理由、濃いデータ、パーソナライズ——のすべてが、この1枚に収まります。

構造はシンプルです。ブランドと顧客のあいだに、アプリやデジタルメディアという体験増幅装置を置く。
- アプリやデジタルメディアでブランド体験を増幅する
- 顧客の行動が生まれる
- その行動がデータとしてブランドに返る
- 行動データで顧客をより良く知る
- 顧客理解にもとづいてより良い体験を提供する
「より良い顧客体験を提供しようとみんな言うけれど、顧客理解ができていないと、Aさんにとって良い体験なのかどうかが分からない。だからこそ、デジタル接点を戦略的に作っていかないといけない」(小畑)
多くの企業が「2030年にハイパーパーソナライズを完成させたい」と掲げています。しかしAIを使うにしても、その手前でAIが顧客を理解できるだけのデータを蓄積しておく必要がある。このループを回せているかどうかが、そのまま2030年の差になります。
島袋氏はこう応じました。
「お客様からいただいたデータを、いただきっぱなしにするのではなく、どう価値に転換していくか。シンプルな図かもしれませんが、大事なマップだと思っています。POSレジでもアンケートでもデータは取れる。それをいかに循環させるか。その先で新規事業に生かすこともあれば、逆に新規事業がきっかけでこの循環が始まることもある」
冒頭の問いに戻ります。新規事業は、既存事業に何を返すのか。答えはLTV、濃い顧客接点、濃いデータ。このループを回す燃料を、新規事業がつくっているのです。
なぜ、UNCOVER TRUTHと組むと違うのか
このセッションで最も示唆的だったのは、島袋氏が語った「(一般論として)自社でできないこと」の中身でした。
ダッシュボードでの可視化は自社で進めている。データも取れている。それでも足りないのは、そのデータをどう解釈し、どの単位で切り、どの打ち手につなげるかというプロセスだ、と島袋氏は言います。だからこそ「解釈ができるパートナーと一緒にやることで、事業にドライブをかけていく」。
小畑はこう応えました。
「逆に言うと、僕らはそれしかできないんです。だからこそ、その分野ではちゃんと戦えるんじゃないかと思っています」
弊社が向き合っているのは、業種ではなくメカニズムです。小売、メーカー、金融、カード会社——業種業態が違っても、最終的な問いは「価値交換ループをどうつくるか」「それをデータでどう効率的に解釈するか」に収束していきます。だから小売の知見が金融に効き、メーカーの知見が小売に効きます。
そして小畑が、一緒に仕事をしたい相手を選ぶ基準として挙げたのは、ツールでも予算規模でもありませんでした。
「お客さんに向き合って、こういうメカニズムを自社で作って、ちゃんとお客さんに喜んで選んでもらえる世界観を作りたい——そういう意思を一緒に感じられる人と仕事をしたいと思っています」
濃いデータの設計から、価値交換ループの実装まで。UNCOVER TRUTHがご一緒します。
まとめ
本セッションから持ち帰れるポイントを整理します。
- 新規事業は、既存事業に「LTV・濃い顧客接点・濃いデータ」を返す装置である。売上だけで評価すると、この価値を見落とす
- 顧客接点が単線であることは、そのまま事業リスクになる。大丸松坂屋百貨店は「顧客接点がほぼ店頭のみ」という危機から、5年で9事業を立ち上げた
- お店起点ではなく生活者起点に振り切ることで、結果的に本業へ還元される。自社アカウント運営の実績が、B2B・B2G向けの新規事業を生んだ
- 来店理由が1つ増えることは、取れるデータが1種類増えること。XRホラーは、洋服・デパ地下以外の来店理由になりうることを示した
- 集計の単位を変えるだけで、見えるものが変わる。館単位を顧客単位に切り直したことで、両館購買層の客単価が単独利用層の2倍以上であること、そして両使い顧客に強く効くブランドが見えた
- 手段(CDP・MA・CRM・パーソナライズ)と目的(選ばれ続けること)を混同しない。手段は3層で、下から積み上げる
- 濃いデータは、取ろうと設計しないと取れない。行動ログはあっても、その行動の文脈・背景・目的は入っていない
データ活用に迷ったら、UNCOVER TRUTH。 顧客理解と顧客体験を循環させる仕組みづくりについて、まずは現在地の整理からお手伝いします。ぜひ一度ご相談ください。
【資料ダウンロード】登壇資料を無料ダウンロード
本記事の元となった登壇資料(PDF)を配布しております。
名古屋エリアの顧客分析、LTVの手段と目的を整理した3層フレーム、「価値交換ループ」の図解——いずれも弊社が実際のプロジェクトで使っている考え方です。自社の現在地を確認する材料として、ぜひお手元に置いてください。
登壇者紹介
小畑 陽一(おばた よういち)
株式会社UNCOVER TRUTH 取締役COO
2014年より取締役として経営に参画し、事業戦略・マーケティングを管掌。大手クライアントのデータ活用コンサルティングに従事。著書に『ユーザー起点マーケティング実践ガイド』『CDPのつくり方』。宣伝会議、ad:tech Tokyo/Kyushu、Retail Agenda、MarkeZine、Web担当者フォーラムなどで講演多数。
島袋 孝一(しまぶくろ こういち)氏
J.フロント リテイリング株式会社/大丸松坂屋百貨店・XENOZ 兼務出向(講演当時)
2004年に株式会社パルコ入社。2016年以降、キリン株式会社、株式会社ヤプリ、株式会社Preferred Networksを経て、2023年よりJ.フロント リテイリング株式会社。2025年より大丸松坂屋百貨店・XENOZに兼務出向。日本オムニチャネル協会「リテール体験分科会」サブリーダー。『販促会議』『日経COMEMO』などで執筆連載中。
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