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Webサイト改善を実現するための「登る山(ゴール)」と「登り方(KPI)」の決め方

こんにちは、UNCOVER TRUTHでCAOを務めている小川卓です。これまでアナリストブログでは、様々なデータソースを一元に可視化し、重要指標を定点観察するためのGoogleデータスタジオ構築についてや、Webサイト改善の施策実行部分であるABテストについてお伝えしてきましたが、本記事ではその前談となる、Webサイト改善のためのゴールとKPIの設定方法についてお伝えしていきます。

「良いWebサイトを作る」「 Webサイトを良くしていく」 というのはどういう意味でしょうか?こんな問いからこの記事を始めていきます。

「良い」サイトあるいは「サイトを改善していく」ためには、何をもって良いとするのか。あるいは何を改善するのかを、まずは決める必要があります。

登山を例に例えてみましょう。登山をするときに最初に決めるのは「いつ」「どの山を登るのか」ではないでしょうか。Webサイトも一緒です。どの指標をいつまでにどれくらい伸ばすかを決める必要があるのです。

Webサイトのゴール設定に必要な要素

ゴールが決まっていないWebサイトでは改善を行うことが困難です。何を改善すればよいのかも定まらず、最適な施策選びや評価が行えなくなってしまいます。

上記の画像に記載の通り、ゴールには指標、値、期間の3つの要素があります。 例えば

  1. 期間:2019年全体 の
  2. 指標:売上目標 は
  3. 値:5,000万円

といった形です。オンラインで売り上げが発生しないサイトであれば

  1. 期間:上期 の
  2. 指標:累計お問い合わせ件数 を
  3. 値:250件から300件に増やす
    になり得るでしょう。

まずゴールを決めることが(あるいは決めてもらうことが)Webサイトの改善を実現するための第一歩です。

さて、ゴールが決まりましたら次に考えるのは、どうやってそれを達成するかという「戦略」 です。筆者はこの「戦略」のことを 「KPI」 と提言しています。つまり 「KPI」は数値ではなく、方針なのです。

そもそもKPIって何?

重要業績評価指標(Key Performance Indicator)みたいな話はいったんここでは省きます。理解していただきたいのは 「登る山=ゴール」とするのであれば「登り方=KPI」である という事です。

また登山の例に戻ります。登る山が決まりました。この山を登るにはいくつかの方法があります。富士山であれば「吉田ルート」「須走ルート」「富士宮ルート」といった様々な方法があるわけです。Webサイトでゴールを達成する方法も様々です。複数ある選択肢の中から最適な方針を決め、その方針に則って改善するのがKPIの本質的な考え方 です。
例えば

  • 売上達成するために集客を強化するのであればどの集客手段を利用するのか?
  • サイト内改善で購入率を上げるのであればサイトのどの部分を改善するのか
  • 購入単価を伸ばすのであれば、どういった商品ラインナップやキャンペーンを行うのか

といった具合です。色々な選択肢が考えられる中、皆さんは方針を決めてKPIを定めなければいけません。

もちろんすべての施策が実行出来れば理想です。しかし人・物・金・技術など必ず制限があります。どんなに素晴らしいプランでも実行出来なければ意味が無い。そのためにも取捨選択のプロセスが必要なのです。

KPI(=戦略)はどのように決めていけばよいのか?

KPIを決める方法は多種多様です。ここでは 「分解法」 という一番幅広い方法を紹介いたします。分解法とは名前の通り、ゴールをいくつかの要素に分けてKPIを決めていくという方法です。

例えば、オンラインで商品を販売しているサイトであれば以下のような方程式が成り立ちます。

オンラインでのお問い合わせがあり、その後に商談を通じて成約に繋がるサイトであれば

といった計算式になります。

では、これら「訪問」「購入率」「問い合わせ率」などがKPIなのか?というとそうではありません。「訪問」をKPIにしてしまうと、そこから取り得る施策が幅広過ぎるという課題があります。つまり 「業績評価指標(Performance Indicator)」ではあるのですが「重要(Key)」というところまで絞り込めていない のです。

そこで因数分解を行った後に必要なのが、これらを増やすための施策の洗い出しです。訪問を増やすためにはどういった集客手法が考えられるのか、問合せ率を上げるためにはサイト内のどの部分を改善できるのか?といった具合です。

上記が施策を洗い出してみた例です。色々な方法で各要素を改善することが可能です。

そしてこの中から、どの施策を重要視するかを決めるのです。繰り返しになりますがすべての施策が実行できるのであれば全てをKPIとして設定し、部署や担当ごとのその数値を追いかけて改善しても良いでしょう。しかし、実際には優先順位を決めないといけない事がほとんどです。では、この優先順位はどう決めればよいのか?

優先順位の決め方とは?

シンプルにまとめると 「実行出来る可能性が高い施策を選ぶ」 という事です。この実行出来るには具体的には2つの意味があります。 「施策が思いつく」 そして 「実行の見込みがある」 という事です。

該当箇所を伸ばそうとしてもそもそもアイデアが無ければ始まりませんし、どんなに素晴らしい案を思いついてもそれが実行出来なければ、絵に描いた餅で実際の数値は改善しません。つまりKPI(=戦略)を決める際にはその先の施策(=戦術)もあわせて検討しておく必要があるということです。

KPIを決め、施策もあわせて考える

よく見るケースとしてKPIを決めた後に具体的に出来ることを考えるため、最初の数か月は何も実行されないというものです。よしリスティング広告やるぞ!⇒予算を取らないと⇒どこにお願いするか決めないと⇒見積もり出してもらわないと⇒広告管理画面の設定をしてもらってようやく配信。ここまで3か月かかるとすれば、その間リスティングからの流入は0件ですよね。

こういったことに陥らないためにも、複数のKPIを設定したり、KPIの検討を早めに行い期間になったらすぐに始められたり、といった状態を作る必要があります。 私が在籍していた会社では、大体3か月くらい前にはKPIの候補を洗い出し終えていました。そこから残りの数か月で人員の調整や予算の確保に回るというわけです。

しっかり優先順位を決めることでスケジュール調整や予算確保、説明も行いやすくなります。何よりやるべきことが明確になるので、実行出来る可能性そして成功確率も上がります。

業種別のKPI例

よくKPI例を聞かれることが多いです。しかし 同じ業種でも、そのサイトの状況やどういった施策が実行出来るかという環境によってKPIとするべきものは変わってきます。 また同サイトでも内部・外部環境によってKPI自体は定期的に見直し変わっていくものです。

そこで、ここでは一般的にはどういったKPIを設定することが多いのかという一例で紹介させていただきます。ここに書いてあるものをそのまま利用すればよいというわけではなく、あくまでも参考にした上で自分のサイトの状況にあったKPIを設定しましょう。

ECサイトの場合

・自然検索経由の流入を10%増やす
・商品閲覧率を訪問全体の40%から60%に増やす
・カート(決済プロセス)への遷移率を10pt増やす
・決済開始から完了の遷移率を10pt増やす
・メルマガ経由の購入を1.5倍にする
・購入1回あたりの平均購入点数を1.3点から1.5点に増やす
・年間の購入回数を2.5回から3.5回に増やす
・年間の購入金額を20,000円から32,000円に増やす

問合せ等を獲得するBtoBサイトの場合

・訪問ユニーク企業数を300社から450社に増やす
・サービスや商品閲覧社数比率を50%から68%に増やす
・ホワイトペーパーダウンロード数を月80件から120件に増やす
・新規のアタックリストを毎月30件から60件に増やす
・セミナーでの総参加人数を800人から1100人に増やす
・コンタクト後の成約率を22%から40%に増やす

企業情報などを紹介しているコーポレートサイト

・Topページからの直帰率を60%から35%まで下げる
・リリースページへの訪問者数を3万から5万に増やす
・採用エントリーを月平均3件から5件に改善する
・目標達成率(特定ページ群閲覧率)を25%から40%にする

ブログやニュースなどのメディアサイト

・新規ユーザーの訪問者数を月間120万から220万に増やす
・3ヶ月以上連続閲覧ユーザーの割合を12%から20%に増やす
・サイト名(ブランド名)での検索回数や流入回数を1.5倍に増やす
・月あたりの訪問回数が5回以上の人を20%から30%に増やす
・1訪問あたりの滞在時間を1.5倍に増やす
・1訪問あたりの平均閲覧ページ数を2.3から3.2に増やす
・1人あたりの広告のインプレッションを12.0から14.5に増やす
・広告のクリック率を0.94%から1.25%に増やす

最後に

KPIを決めるのは大変!と思われた方もいるかといるのではないでしょうか。確かに簡単に決められるものではありませんし、一人で決められるものではありません。施策が実行出来ないKPIには意味が無いですし、関係者を巻き込んで皆が納得する必要があります。

しかし一回決めることが出来れば、その後の施策の実行や評価は圧倒的に楽になります。 都度都度、「これは何のためにやっているんだっけ?」って考える必要はないし、施策の考え方や評価方法もシンプルになります。

自社でKPIがまだ設定出来ていない方は、ぜひ一度KPI設計を行うことにチャレンジしてみてください。きっと皆さんの業務がより評価され、取り組むべきことが明確になるでしょう。


小川 卓
株式会社UNCOVER TRUTH
CAO(Chief Analytics Officer)

Webアナリストとしてマイクロソフト・ウェブマネー・リクルート・サイバーエージェント・アマゾンジャパンなどで勤務。解析ツールの導入・運用・教育、ゴール&KPI設計、施策の実施と評価、PDCAをまわすための取り組みなどを担当。全国各地で講演を毎年40回以上行っている。デジタルハリウッド大学大学院客員教授。 主な著書に『ウェブ分析論』『ウェブ分析レポーティング講座』『マンガでわかるウェブ分析』『Webサイト分析・改善の教科書』『あなたのアクセスはいつも誰かに見られている』『「やりたいこと」からパッと引ける Google アナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本』など。


UNCOVER TRUTHでは様々な業界の企業さまのWeb事業を成長させるお手伝いをさせていただいております。Webサイト改善についてご興味がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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