データ基盤はどちらを選ぶ？クラウド・オンプレミスの比較と選定ポイント

はじめに

データを活用した意思決定を進める中で、データ基盤の構築・運用環境として「クラウド」か「オンプレミス」かという選択は、多くの担当者にとって避けられない課題です。特に、DX推進や業務効率化を目指す企業においては、自社の状況に応じたデータ基盤の選定は成果を左右する大きな要素となります。

本記事では、クラウドとオンプレミスの違いからクラウド移行のメリット・注意点、オンプレミスの強みなどをわかりやすく解説し、自社に適した基盤環境を選ぶポイントについても紹介します。

クラウド・オンプレミスの比較とあわせて、データ基盤に必要な構成要素や導入するツールの選び方を確認したい方は、こちらの記事をご覧ください。

クラウドとオンプレミスの基本的な違い

クラウドとオンプレミスは、どちらも企業のデータ基盤を支える重要な選択肢ですが、それぞれ特徴や運用方法は異なります。適切な基盤を選ぶためには、それぞれの特性をしっかり理解し、自社のニーズや運用環境に合ったものを見極めることが欠かせません。

ここでは、クラウドとオンプレミスのデータ基盤について、それぞれの基本的な特徴を整理し、両者の違いを比較します。

クラウド型データ基盤の特徴

クラウド型データ基盤は、インターネット経由で提供される外部のクラウドサービスを利用して、データの保存・処理・分析を行う方式です。サーバーやストレージなどのインフラを自社で保有・管理する必要がないため、初期費用を抑えながら迅速に導入できるのが大きな特徴です。

また、必要に応じてリソースの変更を柔軟に行える拡張性の高さも魅力の1つとしてあげられます。さらに、定期的なアップデートやセキュリティ対策がベンダー側で自動的に行われるため、運用管理の負担も軽減されます。

オンプレミス型データ基盤の特徴

オンプレミス型データ基盤は、自社内に設置したサーバーやストレージなどのハードウェアを使って、データの管理・処理を行う方式です。クラウドと異なり、システム全体を社内で制御できるので、セキュリティ面での安心感が高く、業種・業務によっては法規制や社内ポリシーに対応しやすいというメリットがあります。

くわえて、ハードウェアやソフトウェアの構成を自社の要件に合わせて自由にカスタマイズできる柔軟性も備えています。しかし、初期投資が大きく、ハードウェアの保守やソフトウェアの更新など、運用面での負担が発生しやすい点には注意が必要です。

クラウドとオンプレミスの比較

クラウド型とオンプレミス型のデータ基盤は、それぞれ異なる利点と課題を持っています。クラウド型は、導入のスピードや拡張性・運用負担の軽減といった面で優れていますが、インターネットを介して外部サービスに依存するため、セキュリティやデータ管理に慎重さが求められます。

一方、オンプレミス型は、セキュリティの高さやカスタマイズの自由度が魅力ですが、初期費用や維持コストが大きくなるため、導入には十分な準備が必要です。それぞれの特徴を理解し、業務内容や社内リソースに応じて、どちらの環境が自社に適しているかを見極めることが重要です。

データ基盤をクラウドに移行するメリットと注意点

企業のデータ活用に伴い、データ基盤を従来のオンプレミス型からクラウド型への移行を検討・実施するケースが増えています。クラウドは導入の手軽さや拡張性の高さなど、多くのメリットを持つ一方で、移行に関する注意点や業種・システム環境による向き不向きも存在します。

ここからは、クラウド移行の主なメリットと注意点を整理し、どのようなケースでクラウド移行が適しているのかを見ていきましょう。

クラウド移行の主なメリット

クラウドへデータ基盤を移行する大きなメリットは、インフラ構築の手間や初期投資を大幅に削減できる点です。クラウドサービスは必要な分だけリソースを利用する従量課金制が多く、スモールスタートが可能なため、事業規模やニーズに応じた柔軟な運用が実現できます。

くわえて、ベンダー側でセキュリティやバックアップ・システムのアップデートを担ってくれるので、社内の運用負担軽減にもつながります。インターネット接続があればどこからでもアクセスできるクラウド環境は、リモートワークや複数拠点間でのデータ活用にも適しているといえるでしょう。

クラウド移行時に注意すべきこと

クラウドへの移行は多くのメリットをもたらしますが、成功させるためにはいくつかの注意点を押さえる必要があります。まず、自社の業務要件や既存システムとの互換性を十分に確認しないまま移行を進めると、機能不足や運用トラブルの原因になります。

また、クラウド上に重要なデータを置く以上、アクセス権限の管理や暗号化・バックアップ体制などセキュリティ対策も徹底しなければなりません。費用についても、利用状況によっては従量課金が想定以上に膨らむ場合があるということを覚えておきましょう。

クラウド移行が適しているケース

クラウド移行が特に効果を発揮するのは、急速な事業拡大やシステムの柔軟な拡張が求められるケースです。スタートアップや中小企業のように初期投資を抑えつつ、短期間でデータ基盤を整えたい場合もクラウドは有効です。

さらに、複数の拠点やリモートでデータへのアクセスを要する企業であれば、クラウドの柔軟性と可用性は大きな強みとなります。社内にIT専門の人材が不足しており、インフラの保守管理にリソースを割けない企業にとっても、ベンダーによる運用代行が得られるクラウド環境は大きな魅力といえるでしょう。

オンプレミスの強みと活用シーン

クラウドへの移行が進む一方で、オンプレミス型のデータ基盤には独自の強みがあり、現在でも多くの企業で採用されています。自社内でシステムを完全に制御できるという特性は大きな利点であり、業種や事業規模によってはクラウドよりもオンプレミスの方が適している場合があるからです。

本章では、オンプレミス型データ基盤の優れた特性について深掘りし、それが活きる具体的な業種や導入環境について紹介していきます。

高いセキュリティとカスタマイズ性

オンプレミス型データ基盤における大きな強みは、自社内でインフラ全体を管理することで実現できる高いセキュリティです。物理的なアクセス制御やネットワーク設定を含め、全てを自社のポリシーに従って設計・運用が行えるので、外部からの侵入リスクを最小限に抑えることが可能です。

あわせて、システム構成を細かく調整できるカスタマイズ性の高さも特徴であり、業務に特化した独自の機能やワークフローの実装がしやすくなります。クラウドのようにベンダーの制約に縛られることなく、自社の技術的要件や長期的な運用方針に応じた環境を構築できる点で、オンプレミス環境は依然として高い価値を持っています。

オンプレミスが有効な業種・環境

オンプレミス型データ基盤は、特に高いセキュリティやコンプライアンスが求められる業種において有効です。具体的には、個人情報や機密データを扱うことから、データの保管場所やアクセス制御の厳格な管理が求められる金融機関や医療機関・公共機関などがあげられます。

環境面で見てみると、工場や研究施設といったインターネット接続が不安定になりえる環境でも、オンプレミスであればローカルネットワーク内で安定した運用が可能です。さらに、既存システムとの高い互換性を必要とする企業や、システムのカスタマイズ性を重視するケースにも適しています。

自社に適したデータ基盤環境を選ぶポイント

クラウドとオンプレミス、それぞれの特徴を理解した上で重要となるのは、自社の業務内容や運用体制・今後の事業計画に合ったデータ基盤環境を選ぶことです。例えば、柔軟な拡張性や迅速な導入を重視する企業にはクラウドが適しており、一方でセキュリティやカスタマイズ性・長期的な安定運用を求める企業にはオンプレミスが向いています。

あわせて、既存システムとの連携・運用コスト・社内のITスキルレベルなども選定において考慮しておきたいポイントです。場合によっては、クラウドとオンプレミスを併用するハイブリッド構成も選択肢の1つであるため、全社的な視点で柔軟かつ持続可能な基盤環境の検討を行いましょう。

まとめ

データ基盤の構築において、クラウドとオンプレミスのどちらを選ぶかは、企業の戦略やリソースに大きく影響する重要な判断です。クラウドは導入の手軽さや拡張性・運用負担の軽減といった点で魅力がある一方、オンプレミスは高いセキュリティ性やカスタマイズ性・安定した運用環境を実現できます。

また、両者を組み合わせたハイブリッド構成も、柔軟性と安定性を兼ね備えた有効な選択肢となり得ます。それぞれの特徴を正しく理解し、自社の業務要件や運用体制をふまえて、柔軟で持続可能なデータ基盤の構築を目指しましょう。