はじめに
前回の記事では、多くの企業に横たわる「ビジネスとエンジニアの分断」という見えない壁を取り上げました。本記事ではその一歩先、なぜその分断はいつまでも埋まらないのかという“構造”に踏み込みます。結論から言えば、これは現場の努力不足や個人の能力の問題ではなく、両者の「あいだ」を取り持つ役割が組織に存在しないという構造課題です。この記事を読むことで、分断を生む構造の正体と、それをどの方向から解いていくべきかの見取り図を持ち帰っていただけます。
「ビジネスとエンジニアの分断」そのものについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
なぜ「分断」は放置され続けるのか
ビジネスサイドとエンジニアサイドは、関心も、使う言葉も、評価される成果も異なります。ビジネスサイドは施策と成果を、エンジニアサイドはシステムの安定とデータの整合を見ています。どちらも自分の持ち場では正しく仕事をしているのに、データ活用のプロジェクトになると噛み合わない——この“すれ違い”が、多くの現場で慢性化しています。
壁は一つではなく、絡み合っている
分断は「人間関係」の話にとどまりません。その背後には、データ環境とプロセスの問題が積み重なっています。BIツールやデータマートが乱立して統制が取れていない、データ品質が低く数値が信じられない、情報システム部門やIT部門へのデータ抽出依頼が集中して対応が追いつかない——こうした壁は互いに関連し合い、組織全体のデータ活用を停滞させる大きな要因になります。
核心は「誰の仕事でもない“あいだ”」
これらの壁を貫く核心はシンプルです。両者の「あいだ」に立ち、ビジネスの要望を技術の言葉に、技術の制約をビジネスの言葉に翻訳し、データ活用のプロセス全体を回す役割——いわば「取り持つ人」が組織に定義されていないのです。この役割の不在こそが、プロジェクト推進のボトルネックとなる現場を数多く生んでいます。裏を返せば、分断は個人の努力不足ではなく、必要な役割が組織に存在しないという「構造課題」だということです。だからこそ、担当者を叱咤したり、片側のスキルを増やしたりするだけでは埋まりません。
構造課題は、どう解くのか
役割の不在という構造課題は、「役割を定義する」「その役割が回すプロセスを設計する」「役割を担う人材を確保する」という三つの打ち手で解いていきます。順に見ていきましょう。
①「取り持つ人」の役割を組織に定義する
最初の一歩は、あいまいだった「あいだ」の仕事を、明確な役割として組織に定義することです。具体的には、次のような責務をひとつの役割として言語化し、責任者を置きます。
- ビジネス課題を理解し、必要なデータを定義・整備する
現場が本当に解きたい課題を捉え、そのために必要なデータを見極めて整える。 - 技術とビジネスの橋渡しをする
データ基盤(技術)と現場の活用(ビジネス)の間に立ち、双方をつなぐ。 - データ定義やプロセスを文書化し、維持・管理する
属人化を防ぎ、組織の資産として残す。 - データ活用を推進し、組織全体のデータリテラシー向上を支援する
使える人を増やし、活用を組織に根づかせる。
この役割を組織内に定義し、責任者を置くこと。これが分断を解く第一歩です。なお、役割を担う人材は必ずしも社内で抱える必要はなく、外部人材の活用も選択肢の一つになります。
②「あいだ」を回すプロセスを設計・実行する
役割を決めただけでは、また属人的な頑張りに戻ってしまいます。役割が機能するように、データ活用のプロセスそのものを設計し、仕組みとして回すことが欠かせません。整えるべきは、データの流れ(どこから来て、どう加工され、どこへ行くか)の可視化・整理、データ項目や指標の「定義」の明確化と共通言語化、品質を担保するルールとチェック体制、定義書やフロー図・マニュアルといったドキュメントの整備、そしてBIツールの選定・活用ガイドラインです。こうした“仕組み化”によって、属人化を防ぎながら効率を上げていきます。
この一連の準備は、いわばデータ活用の「お膳立て」です。DXAでは、これをデータ環境整備 → 分析用データの作成 → データの可視化 → ナレッジの共有という四つのコアプロセスとして体系化しています。それぞれの中身は、コアプロセスを解説する各記事で詳しくご紹介します。
③ 役割を担うのは「アナリティクスエンジニア」
では、この「取り持つ人」を実際に担うのは誰なのか。それがアナリティクスエンジニア(AE)という役割です。AEは、ビジネスと技術の両方を理解し、その間に立ってデータ活用プロセス全体を円滑に進める「取り持つ人」であり、データ活用の「架け橋」となる存在です。両サイドのコミュニケーションを取り持ち、双方の負荷を軽減しながらデータ活用を支援します。
連携の中身を具体的にすると、ビジネスサイドに対しては分析要件のすり合わせや可視化方法の検討を、エンジニアサイドに対しては使用データのすり合わせやデータ連携の確認を行います。ビジネスの背景とシステムの課題の双方を理解しながらデータ活用を推進する——それがアナリティクスエンジニアという専門職です。
アナリティクスエンジニアとは具体的にどのような人材なのか。次回、その正体を掘り下げます。
まとめ
ビジネスとエンジニアの分断は、どちらかが悪いのではなく、両者の「あいだ」を取り持つ役割が組織に存在しないという構造課題でした。解き方は、①役割を組織に定義する、②役割が回すプロセスを設計・実行する、③その役割を担う人材(アナリティクスエンジニア)を確保するという三つ。この三つが噛み合ってはじめて、分断は埋まり、データ活用は前に進みはじめます。
DXAccelerator(DXA)は、この「取り持つ人」=アナリティクスエンジニアを常駐(準委任契約)という形で組織に供給し、四つのコアプロセスを通じて、クライアント企業が自らデータ活用を推進できる「自走状態(=真の内製化)」を目指す伴走支援サービスです。自社の「あいだ」に取り持つ人がいるか——ぜひ一度、組織を見渡してみてください。
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