見えない壁の正体:ビジネスとエンジニアの分断

見えない壁の正体:ビジネスとエンジニアの分断

更新日:2026/07/08

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はじめに

「データ活用を進めよう」と号令をかけ、ビジネス側は必要なデータを依頼し、エンジニア側もデータを提供している。それなのに、施策が前に進まない——。多くの組織で起きているこの停滞の裏には、当事者にも見えにくい「壁」があります。本記事では、ビジネスとエンジニアの分断がどんな形で現れるのかを、現場で繰り返し観察される3つの事象として整理します。壁の正体を意思決定者が共有できることが、架け橋づくりの第一歩です。

データ依頼はしている。なのに、なぜ前に進まないのか

データ活用の現場は、大きく2つのサイドに分かれています。ビジネスサイドは「課題の発見」と「施策実行と検証」を担い、エンジニアサイドは「データパイプライン」や「データフロー構築」を担います。両者の間では、ビジネスから「データ依頼」が、エンジニアから「データ提供」が行き交っています。役割分担も、依頼のやり取りも、一見きちんと機能しているように見えます。

ところが実際には、この「データ依頼」と「データ提供」の間で噛み合わせがずれ、そこがボトルネックになります。どちらかが怠けているわけではありません。両者の立場・目的・前提が異なるために、依頼が期待どおりに満たされないのです。これが「見えない壁」であり、ビジネスとエンジニアの分断の実像です。

見えない壁の正体:3つの事象

分断は抽象的な「相性の悪さ」ではなく、具体的な事象として繰り返し現れます。代表的なのが次の3つです。自組織で思い当たるものがないか、確認してみてください。

事象①:「このデータが見たい」が、そのままでは伝わらない

ビジネスサイドは「このデータが見たい」と依頼します。しかしエンジニアサイドからすれば「簡単に言わないで」と感じる場面が少なくありません。ビジネスの言葉で語られた要望は、そのままではデータの定義や抽出条件に落ちておらず、何をどの粒度で出せばよいのかが曖昧なまま渡されるためです。依頼と実装の間に翻訳のギャップがあり、やり取りの往復だけが増えていきます。

事象②:それぞれが“自己流”で回避してしまう

依頼が噛み合わないと、両サイドはそれぞれ手近な方法で回避を始めます。ビジネスサイドは、自前のSQLやBIで何とかしのいだり、外部ベンダーに依頼したりして自分たちで手当てします。一方エンジニアサイドは、他業務との並行に追われ、根本のデータ整備は先送りになりがちです。その場はしのげても、データの作り方が場当たり的に分散し、後から誰も全体像を把握できなくなっていきます。

事象③:出てきた数字が、信じられない

自己流の回避が積み重なった結果、最後に起きるのが「数字が信じられない」という事態です。ビジネスサイドは「経理と数値が合わない」と戸惑い、エンジニアサイドは「ベンダーの作ったものは分からない」と、出所や加工ロジックを追いきれなくなります。意思決定の土台であるはずの数字そのものが揺らぎ、データに基づいて動こうとするほど確認作業に時間を取られる——分断がもたらす最も痛い症状です。

なぜ、この分断は放っておいても埋まらないのか

3つの事象に共通するのは、どれも「担当者の努力不足」では説明できないという点です。ビジネスサイドとエンジニアサイドの間には、目的意識・言語・文化の違いからくる深い溝があります。ビジネスは迅速な意思決定と施策実行を求め、エンジニアはデータ基盤の構築・保守に責任を持つ——それぞれが自分の役割を全うするほど、噛み合わないまますれ違いが起きるのです。

だからこそ、この分断は個人の頑張りや一時的な調整では埋まりません。両者の目的と言語をつなぎ直す「構造」を組織に用意しない限り、事象①②③は形を変えて再発します。意思決定者に求められるのは、犯人探しではなく、この構造課題として壁を捉え直すことです。

まとめ:まず“壁の正体”を共有することが第一歩

データ活用が進まないのは、ビジネスとエンジニアの分断が「①依頼が伝わらない」「②それぞれが自己流で回避する」「③数字が信じられない」という3つの事象として現れているからです。まずはこの壁の正体を、両サイドと意思決定者が同じ言葉で共有すること。それが架け橋づくりのスタートラインになります。今後は、この分断を埋める「取り持つ人」の不在という構造課題を掘り下げます。

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2022年、UNCOVER TRUTHに中途入社。
大手GMS・外資系SPA・大手百貨店といった小売業界を経験後、一念発起してIT業界に転身。
広告代理店・マーケティング支援会社などのデータ業務を支援に携わる。
現在はユニットリーダーとして、クライアントのデータ活用を推進するとともに、
メンバーの採用やチームビルディング、強い組織づくりに注力。出雲市在住。

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