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人材業界の事例に学ぶ、「負けにも意味がある」デジタルマーケティング推進の考え方|セミナーレポート

UNCOVER TRUTHはこれまで幅広い業種のWebサイト改善を手がけてきましたが、プロジェクトで成果が出やすい企業には「顧客獲得単価が高い」という共通点があります。言い換えると、広告出稿の投資対効果に頭打ち感を感じている企業ほど、広告流入の「受け皿」となるWebサイトにおいてCVRが数%改善するだけで、ビジネスに与えるインパクトが大きなものになるのです。

今回のセミナーでご登壇いただいたのはそのような業種の一つである「人材業界」。また人材業界では各企業が互いに似た商品(求人情報)を持っており、企業間での差別化が難しいということもマーケティング担当者の共通の悩みになっています。だからこそ一度Webサイトを訪問してくれたユーザーに対し、Webサイト上での体験を通して自社のファンになってもらい、納得した上で登録や利用をしてもらう=エンゲージメントを高めるということがとても重要です。

こうした業界事情の中でスタッフサービス社とビズリーチ社、ベンダー側からはエンゲージメントプラットフォームを提供されているマルケト社にご登壇いただき、さらに国内の主要人材企業から約60名の皆さまに聴講者としてお集まりいただきました。競合他社という関係性を超えてナレッジを共有する機会を作ることができ、UNCOVER TRUTHとしても人材業界全体の成長に貢献したいという思いを新たにし、身が引き締まる思いです。

まずは、自社のサイトが「リニューアル」「PDCA」どちらに取り組むべきか考える

さて第一部はUNCOVER TRUTH CAO 小川卓の講演です。冒頭ではWebサイト改善について「そもそも見直すべきは『集客』なのか『サイト』なのか」という視点、それを見極めた上で「『リニューアル』と『PDCA』のどちらが適しているのかを考える必要がある」ということについて説明しました(これについて、詳細は前回の記事をご覧ください)。

UNCOVER TRUTHはこのうち「WebサイトのPDCAを回す」ということに特化し、専門チームを組んでお客様を支援しています。PDCAが効果的なのは、Webサイトが次のような状況にある時です。

  • ある程度安定した流入やCVがある(Webサイトが成長フェーズにある)
  • 細やかな変更を行うリソースやツールがある
  • 行うべき改善施策が見えている
  • いちかばちかより、成功確率を上げ、積み上げていきたい

このうち「成功確率を上げる」という項目は小川が講演で必ずお伝えしている「打席に立つ回数を増やす」と同義ですが、この原則に基づいてスピーディにPDCAを回し、失敗を繰り返すことによって成功へと辿り着いたのがスタッフサービス様の求人サイト「働くナビ」の事例です。


負けたことによって新たな考察が生まれる

「働くナビ」ではヒートマップツール「USERDIVE」での分析の前にまずはアクセス解析を行い、「よく見られていてCVに貢献しているコンテンツ」「よく見られているがCVに貢献していないコンテンツ」「あまり見られていないがCVに貢献しているコンテンツ」と、コンテンツごとのCVへの貢献度を明らかにしました。これによって分かるのが、どのコンテンツを改善対象にすればCVへのインパクトを生めるのか?ということ。「働くナビ」の場合には、ユーザーの信頼・安心を促す情報や種類別の仕事検索(マッチング)の情報に触れたユーザーの会員登録CVRが高く、しかしながら閲覧数自体は多くないことが分かりました。ここが「改善の余地がある」ポイントです。

このポイントが分かったら、さらにヒートマップ分析でユーザーがページのどこを見ているか・どこをクリックしているか・どこまでスクロールしているかを可視化します。ヒートマップツールの使い方のポイントでもある「CVした人とCVしなかった人では行動にどのような違いがあったのか」という比較から、検索系のコンテンツへの接触を高めた方がCVするのではという仮説にたどり着き、検索系のコンテンツをトップページに表示させるという改善施策を実行しました。しかし結果は、元の登録完了率に対して79.5%という数字に。改善をしたのにKGIの指標数字が下がってしまったわけですが、なぜ負けたのかを分析し直したところ、登録フォームへの遷移率が上がっているにも関わらず、その後の登録率が下がっていることが分かりました。この施策で負けたことによって「働くナビの特徴などのコンテンツへの接触が下がり、このサイトで派遣登録数ことに対する納得感が低いまま登録フォームに遷移させられると、その後の登録率が下がるのではないか」という新たな考察が生まれたと言えます。

停滞するくらいなら、失敗をした方がいい

最終的に「働くナビ」ではこのような2回の負け試合と、それぞれ負けた原因の考察を経て、三度目の正直で登録完了率121.0%という成果を出すことができました。この事例での一番の示唆は「負けにも意味がある」ということです。小川は「Webサイト改善のためのPDCAにおいて失敗よりも怖いのは停滞すること。常に何かをテストしている状態であることがもっとも重要」と強調し、講演を締めくくりました。

かつて「概念」でしかなかったことを、ツールによって実現できるようになった

第二部ではエンゲージメントプラットフォーム「Marketo」を提供しているマルケト社から大里紀雄氏、そしてMarketoを活用しているビズリーチ社から冨里晋平氏が登壇し「顧客体験を高めるエンゲージメントマーケティング」をテーマに講演しました。

Marketoは大企業のみならずスタートアップ企業にも多く導入されており、サブスクリプション型のビジネルモデルであることから「継続して利用してもらうことが重要」と大里氏。同時にMarketoは全てを自動化してくれる魔法の杖ではなく、かつて概念に過ぎなかった「一人一人のお客様と中長期に渡ってつながっていくためのマーケティング」を、各企業の戦略に付随して実現するものであると説明しました。

ツールのために組織を変えることも必要

登録したユーザーの稼働率アップにMarketoを活用しているのが、転職のプラットフォームサイト「ビズリーチ」です。冨里氏はMarketo活用によるエンゲージメント向上の勝ちパターンが「誰に(セグメント)、何を(コンテンツ)、いつ(トリガー)」に集約されると言います。

ビズリーチでは登録と同時にレジュメを作成してもらうため、ログイン情報に加えて転職意欲や希望職種などを詳細に把握することができます。こうした既存のデータベースを活用してセグメントを設定するわけですが、ここではそのセグメンテーションが本来の目標にきちんと紐づいていることが重要です。ビズリーチの場合は「企業からのスカウトにユーザーが返信をする」というリアクションが一つの目標になるため「スカウトを受け取ったのに返信していない人」「そもそもスカウトを受け取ることができていない人」でセグメントを分けました。これに対してセグメントごとにコンテンツ(何を伝えるか?)を考えると、例えば後者のセグメントのうち「そもそも企業からの検索にヒットされていない」というフェーズの人へ向けては、企業が登録者を検索する際の検索キーワードの人気ランキングを伝えるといった施策を打つことができます。最後に、いつ(トリガー)という要素について「ここがMarketoの一番面白いところ。カスタマージャーニー全体のシナリオを作るのはすごく大変なので、一つ一つのメールでいかにPDCAを回すかということに注力している」と冨里氏。単発でのメール施策を振り返り、それを自動化できる利便性こそが、Marketoの魅力でありマーケターに活用されるゆえんであると説明しました。

講演の最後に冨里氏は、約2年間のMarketo活用を経て気づいた「エンゲージメントマーケティング」に必要なこととして3つの項目を挙げ、次のように説明しました。

  • 目標を一つに:今回ご紹介したような施策において、一連のフローの中でもマーケティングやプロダクトなど、様々な部門が横断的に関わります。それぞれの持ち場で役割をしっかりと果たすためには、部門横断的な目標の共有が不可欠です。
  • 組織ごと変える:新たにツールを導入するのであれば、それに対応するための新しい組織を作ったり、組織を変えたりする必要があります。ビズリーチではMarketoの導入を機にマーケティングチームとプロダクトチームを同じ組織に組み込み、さらに事業構造全体を改めて把握することによって、KPIを最適化しました。
  • 社外に仲間を作ること:今回のセミナーのような機会にナレッジを共有したり、時にはライバル企業同士て相談会を開催しありすることもある、と冨里氏。一社で頑張るのではなく、周囲を巻き込んで一緒に成長していくことの重要性を語りました。

「分母」「分子」という2つの視点

第3部では、人材業界における分母と分子、つまり「登録率(数)を上げる」「稼働率を上げる」という2つの視点を軸にパネルディスカッションを実施しました。

まずは分母を増やすことについて。テレビCMが印象的なビズリーチ様ですが、いわゆる「マス」を取りに行った成果はどうだったか?という質問に対し「実は集客はWeb広告がメイン。テレビCMは、多額の投資によって得たリードをいかに無駄にせず実らせるかという視点において、組織を変えるきっかけになった」と冨里氏。第二部の講演にもあった「目標を一つに」「組織ごと変える」のきっかけを生む新しい投資の考え方については、小川も「新しいことをとにかくやってみるというタイミングでは、KPIを設定しないほうがうまくいく時もある」と続けました。

また B to B と B to C の側面があるのは人材業界の特徴の一つですが、マルケトの大里氏は「to B も to C も考え方は一緒。最終的にアクションを起こすのは一人の人間であることに変わりはない」とした上で、稼働率の向上について「転職意欲が冷めた時はメールすら不要だし、熱くなっている時は直接電話をかけてこられても迷惑に思わない。対象となる人の感情に寄り添いながらタイミングをはかることが最も大切」と強調。ビズリーチの冨里氏は「to C の満足度を上げるためには to B への施策が不可欠。ユーザーに対する企業からのスカウトをばらけさせることが結果的に to C の満足度向上につながる。ユーザーの転職意欲は変えられないが、意欲のある人にマッチした求人情報を届けるための工夫はできる」と、人材業界においては企業とユーザーに対する施策がマーケティングの両輪を成すものであり、稼働率向上のために変えるべきはユーザーの転職意欲ではなく企業とユーザーのマッチング機会であると話しました。


根拠に基づいてテストを繰り返せば「分母」を増やせる時は必ず来る

こうした機会の創出にMarketoを活用しているビズリーチ様に対し、スタッフサービス様では同様のプラットフォームを導入していません。冨里氏から神谷氏に「分析“だけ”に投資するのって、正直勇気がいりませんか?」という直球の質問が飛び出すと神谷氏は「Webでのビジネスが成長するという直接的な効果に加え、新しい取り組みへの効果に見通しを立てるような会話の際に、それって本当なの?という質問に対して根拠を示せるのがヒートマップ。万が一失敗した場合にもそれが次の成功を生み、他の事業では(失敗した施策を)やらないという判断材料にもなる。負けが続いても、データに基づいてテストを繰り返していれば絶対に勝つ時が来ると信じられるのがヒートマップツールのいいところ」とした上で「ただしツールを入れただけで数字が上がるということはなく、導入した後の運用にどれだけ注力できるかが大事。内部で組織を持つことと比較すればアウトソーシングは効率的かつ安価でスピード感も早いので、そこに投資し戦略的に活用するという判断はしていくといいと思う」と、ヒートマップツールがもたらす「分母を増やす」という成果に加え、戦略的に外部パートナーを作ることの効用についても触れました。

デジタルマーケティングに対する人材業界のポジティブな姿勢

冒頭でもお伝えしましたが、今回は会場にいる方の大半が人材業界の皆さまでした。「分母を増やす」「分子を増やす」ということに日々取り組んでいるそれぞれの立ち位置から、自社の事例を詳細に公開してくださったゲストスピーカーの各社をはじめ、競合企業が一堂に会する様子には、デジタルマーケティングを「取り組まなければいけないこと」ではなく「顧客満足度を向上し、自社のビジネスを成長させられる手段」としてポジティブに捉える人材業界全体の姿勢がうかがえました。

UNCOVER TRUTHでは、今後もこのようなセミナーを通して積極的に成功事例を発信し、Webビジネスの成長やそれに向けた組織上の課題を抱えている企業・ご担当者様を支援してまいります。

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