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CDPの費用対効果はどう算出するのか?|顧客のセグメント転換で考える

この記事では、目的や環境に合わせたCDP選びの参考となるべく、 CDPの費用対効果について、統合データを分析し、顧客のセグメント転換のシミュレーションから考える方法について書いています。

当社UNCOVER TRUTHでは「CDP導入による期待効果(費用対効果、ROI)」についてご相談をいただくことがあります。 大きな投資決裁になるので社内で要求されることは当然だと理解しています。ですので、今回は、DXプロジェクトを推進する上で知っておきたい「CDPの費用対効果」についてまとめてみました。

CDPが1to1コミュニケーションを実現するインフラとなる

前述の「 CDP導入による期待効果(費用対効果、ROI)」のご質問に対して、当社では下記2つの回答をご用意しています。

  1. そもそもCDPそのものは稼ぐためのシステムではない(概念論)
    効率的に稼ぐために驚異的なパワーを発揮するが、直接稼ぐのではなく稼ぐための司令塔である

  2. CDPはマーケティング・コミュニケーションの司令塔として効率的に稼ぐためのインフラになる(具体論)
    CDPが1to1コミュニケーションを実現する司令塔となり、適切なセグメントから売上を効果的に引き上げることができるようになる(前提としてMAや接客ツールなどいわゆる施策実施ツールが必要です)

この記事では前述の回答の②である具体論についてお伝えできればと思います。①については別記事にてまとめてありますので併せてご覧ください。別記事:CDPの費用対効果はどう算出するのか?|インフラとしてCDPを考える

導入効果をシミュレーションする

今回の具体論でお示しするのは、CDPなどマーケティング基盤の導入効果を金額換算で算出する方法です。CDPを導入する際の、稟議決裁の添付資料として使います。あくまで想定範囲での概算算出になるため「CDPを導入するならこのくらいの結果は出そう」という目標に近いものとご理解ください。

まずは、導入効果シミュレーション表のご紹介です。

▼導入シミュレーション表▼

導入効果シミュレーション表のSAMPLE
【導入効果シミュレーション表のSAMPLE】

以下に作成の際の重要なポイントをいくつか紹介しますので、これらが示せるよう、表については自社の事業に合わせてカスタマイズしてご利用いただけますと幸いです。本来、事業全体で見渡すと、広告や新商品・新店舗などによる新規獲得領域の売上が加算されると思いますが、本記事ではCDPを既存顧客のCRMに特化した効果として議論の範囲を制限して進めたいと思います。

それでは、シミュレーション手法の説明に移りたいと思います。まずはなんと言っても現状の顧客分析が重要となり、これがすべての根幹となります。 シミュレーションのためには現状の顧客の購買データや契約データをオンライン/オフライン問わず収集、統合、分析してください。 これを一般的にアセスメントや基礎分析と呼びます。

▼シミュレーションに向けた手順と内容▼

手順と項目内容
顧客分類F1/F2/準ロイヤル/ロイヤル/休眠等、購買(回数/期間)軸で分類することが一般的です。
商品カテゴリを複数持つブランドの場合、商品カテゴリ別に算出する場合や単一カテゴリやカテゴリ併売など商品軸で顧客分類をするケースもあります。店頭とECなど購買チャネルを組み合わせることもあります。すでに会員制度を持っている場合、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナのような顧客分類であってもシミュレーションに活用可能です。
分類別KPI顧客分類(セグメント)ごとに、顧客数/顧客単価/購買頻度/セグメント転換率等を明らかにします。
特に経年のセグメント転換率が重要です。休眠(離脱)が増えているのか、F2転換率が停滞しているのか、ロイヤル維持率が低下しているのかなど、事業拡大における課題を明らかにすることができます。
KPI目標変数                            上記のKPIをどの程度改善させることができるのか?が目標変数となり、CDP導入効果予測における重要指標です。
主に「セグメント転換率」を目標変数とします。例えば、F1からF2への転換率が現状30%のところを、CDPおよび施策実施ツール導入により40%目標に設定するといった変数です。
施策対象セグメント        最も事業インパクトが大きな顧客セグメントを施策対象とするケースがほとんどです。
例えば店舗やECなどで物販をしている企業ではF1からF2への転換率を引き上げる目標を設定することが多く、その場合の対象セグメントは「F1層」となります。CDPは分類した顧客ごとに購買履歴やWeb/App行動を統合して分析が可能となり、分類ごとの顧客特徴を明らかにすることができます。対象セグメントの拡大要因/停滞要因/低下要因の特徴が判断できれば、対象セグメントに最適化した施策を実行することができるようになります。

※F1/F2のFとはfrequencyを指します。この記事では、それぞれ1回目、2回目の購入回数を意味します。

顧客のセグメントマップで確認する

シミュレーションの手順を踏まえて、以下のような顧客のセグメントマップと照らし合わせて確認します。

【出典:西口一希氏著「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社) 】

有名な西口一希さんの著書「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」に紹介されている9セグマップなど、顧客分類手法については世の中にたくさんの知見があるため、本記事では分類方法は規定せず詳しい説明は割愛します。 事業形態ごとに最適なセグメント手法はさまざまありますが、上図のような自社の顧客を分類するマップを作成し、分類された各象限ごとに顧客数/顧客単価/売上などを当てはめます。

例えば、F1層が10万人、顧客単価が1万円。F2層の顧客単価が2.5万円だったとします。

仮に、現在のF2転換率が30%だった場合。F1からF2に転換した3万人が1万円単価から2.5万円単価に変わります。このF2転換率が40%となった場合はどうでしょう。F2転換者(単価2.5万円)が さらに1万人増加し、1万人×2.5万円(増加分)で2億5000万円の売上増加見込みとなります。つまりF2転換率を10ポイント向上させることで、1億5000万円の売上拡大貢献を目標とする収益シミュレーションが成り立ちます。

冒頭で紹介した導入シミュレーション表では、このような転換率の目標変数を書き込むフィールド(セル)があります。ここに40%と書き込むと自動的にF1層からF2層の顧客数が移転され、F1層が減り、F2層が増加します。このようにKPI目標を書き込むことで収益予測を算出するシートを作成することをおすすめします。

CDPの導入で顧客の特徴がより明らかに

CDPを導入することで、分類した顧客ごとに購買履歴であるRFMや購買チャネルや購買された商品やカテゴリが全て統合され、さらにはWeb/Appによる閲覧行動やお気に入り、お店やブログのフォローなど、デジタル上の行動結果データを統合して分析することが可能となります。つまり、顧客分類ごとにかなり詳細な「顧客の特徴」を明らかにすることができます

リッチな統合データを活用することで、対象セグメントごとの拡大要因/停滞要因/低下要因の特徴が判断できれば、対象セグメントごとに最適化した施策を実行することができるようになることは容易に想像でき、今回のような顧客分類に立脚した収益改善シミュレーションは根拠を持った強い指針となり、社内決裁だけではなく、事業目標を掲げる一助となるのではないでしょうか。

ここまでお読みいただきありがとうございます。統合データを分析し、顧客のセグメント転換のシミュレーションからCDPの費用体効果を考える方法についてまとめました。今後の皆さまのCDP選定の参考となれば幸いです。

CDP選定について他の視点でも記事を書いていますので、こちらも併せてご覧ください。

別記事:CDPの費用対効果はどう算出するのか?|インフラとしてCDPを考える

別記事:CDP導入にはいくらかかる?|項目と費用一覧付

別記事:製品型CDPとクラウドプラットフォーム(GCPやAWS)の主な違い|料金・機能・特徴の比較

別記事:自社に適したCDPの選び方|種類と特徴


小畑 陽一
株式会社UNCOVER TRUTH
取締役COO(Chief Operating Officer)

music.jpやルナルナを手がけるエムティーアイ社出身。ソリューション事業責任者として、大手企業向けモバイルサイト構築ソリューションで、国内ナンバーワンのASPサービスを展開。2014年、取締役として株式会社UNCOVER TRUTHの取締役COOとして経営に参加。経営・事業戦略とマーケティングを管掌。 ad:tech Tokyo / Kyushu、宣伝会議、MarkeZine、Web担当者フォーラムなど講演活動多数。
著書:『ユーザー起点マーケティング実践ガイド』(CDP専門書籍)


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