はじめに
これまでの連載で、私たちはデータ活用が進まない現場に共通する「見えない壁」—ビジネスサイドとエンジニアサイドの分断—と、その壁がなかなか埋まらない理由が「両者を取り持つ役割が、どの部署の仕事にもなっていない」という構造課題にあることを見てきました。では、その「取り持つ人」とは、具体的にどのような職務なのでしょうか。
本記事では、DX-Accelerator(以下、DXA)がデータ活用支援の中核に据える「アナリティクスエンジニア(Analytics Engineer、以下AE)」とは何者かを、データ活用に悩む部長・推進担当の方——つまり意思決定者の視点から解説します。読み終える頃には、AEがなぜ「架け橋」と呼ばれるのか、そして組織のデータ活用に何をもたらす存在なのかが、はっきりと見えてくるはずです。
データが組織の「共通言語」として機能している状態がどのようなものかは、こちらの記事もあわせてご覧ください。
なぜ組織には「架け橋」が必要なのか
私たちUNCOVER TRUTHが多くの企業のデータ活用を支援するなかで、共通して直面してきた大きな課題があります。それは、企業のビジネスサイドとシステムエンジニアサイドをつなぐ「架け橋」の不在です。
ビジネス現場は、データに基づいた迅速な意思決定や施策の実行を求めています。一方でエンジニアサイドは、データ基盤の構築・保守に追われています。両者の間には、目的意識や言語、文化の違いからくる深い溝が存在します。この「架け橋の不在」こそが、データ活用プロジェクトの推進を阻む大きなボトルネックになっている——そんな現場を、私たちは数多く目の当たりにしてきました。
問題は、この「あいだ」が誰の仕事でもない空白のまま残ってしまうことにあります。ビジネス側に寄れば技術がわからず、技術側に寄ればビジネスの意図が伝わらない。だからこそ、両方を理解し、その空白を埋める職務が必要になります。それが、これから紹介するアナリティクスエンジニアです。
アナリティクスエンジニアとは何者か
アナリティクスエンジニアとは、ビジネスと技術の両方を理解し、その間に立ってデータ活用プロセス全体を円滑に進める「取り持つ人」であり、データ活用の「架け橋」となる存在です。ここで大切なのは、AEは「片側だけの専門家」ではないという点です。ビジネスの専門家でも、システムの専門家でもなく、両側をつなぐことそのものを専門にする——ここにAEという役割の本質があります。以下、4つの側面からその姿を具体的に見ていきます。
ビジネスと技術の“あいだ”に立つ「取り持つ人」
AEの役割は、ビジネスサイドとエンジニアサイドのコミュニケーションを取り持ち、双方の負荷を軽減しながら、データ活用を支援することです。ビジネスの背景とシステムの課題の両方を理解しながらデータ活用を推進する、いわば「二つの言語を話せる」プロフェッショナルだといえます。前章で述べた「誰の仕事でもない空白」を、専任で引き受ける存在——それがAEです。

双方への「連携」で、両サイドの負荷を下げる
AEは、ビジネスとエンジニアの双方に対して、次のような橋渡しを行います。
- ビジネスサイドへ
分析要件のすり合わせや、可視化方法の検討などを行います。「何を知りたいのか」「どう見えれば意思決定に使えるのか」を一緒に整理します。 - エンジニアサイドへ
使用するデータのすり合わせや、データ連携の確認などを行います。「どのデータを、どうつないで使うのか」を技術サイドと擦り合わせます。
そしてAE自身も、データ環境の整備、ドキュメント化、データの抽出と可視化といった実務を担います。両サイドをつなぐだけでなく、自ら手を動かして「使える状態」をつくるところまでを引き受けるのが、この役割の特徴です。

データ活用の「お膳立て」を担う ― 4つのコアプロセス
AEはクライアント先に常駐し、主に次の4つのプロセスを通じてデータ活用を支援します。これは、組織がデータを活用するための「お膳立て」を進める仕事だと言い換えられます。
1.データ環境整備
データを使いやすく、綺麗な状態に整えます(データウェアハウスやBIツールの整理、定義書やデータカタログの作成など)。
2.分析用データの作成
現場の要望に沿って、分析に使えるデータを用意します(データマートの構築、繰り返し使える処理フローの整備など)。
3.データの可視化
分析用データを使ってグラフや表を作成し、考察や示唆を得やすくします(BIダッシュボードの構築、レポート作成など)。
4.ナレッジの共有
業務プロセスを企業側にレクチャーし、内製化(自走化)を支援します(ドキュメントの共有、権限設定の支援、レクチャーの実施など)。

DXAが重視しているのは、いきなり大がかりに始めるのではなく、小さなところから手を付けてクイックに成果を出すことです。日常のデータ活用スピードを上げ、誰でも扱いやすいデータ環境とドキュメントを整えることで、施策や分析の質とスピードの向上を目指します。
コアプロセスの起点となる「データ環境整備」については、こちらの記事で詳しく解説しています。
AEを支える「3つの力」
両サイドを取り持ち、お膳立てを進めるAEには、次の3つの力が求められます。ここでは意思決定者の視点で、それぞれが「何のための力か」を押さえておけば十分です。
- 技術力
データ基盤を理解し、データを自在に構築・操作する力です。技術サイドと対等に会話し、「使える状態」を自らつくるための土台になります。 - ビジネス課題解決力
ビジネス課題を捉え、データで価値を創出する力です。「そのデータで何を判断したいのか」を見失わないための力です。 - プロセス構築・連携力
データ活用のプロセスを設計し、組織連携を推進する力です。属人的な作業を、組織として回る「仕組み」に変えていきます。

この3つがそろってはじめて、AEは「両側をつなぐ専門家」として機能します。技術に強いだけでも、ビジネスに強いだけでも、架け橋にはなれない——ここが、既存のエンジニアやアナリストとの決定的な違いです。
AEは「役割」であり、組織に根付かせる「仕組み」でもある
アナリティクスエンジニアとは何者か——その答えは、ビジネスと技術の「あいだ」に立ち、両側をつなぐ「架け橋」となる専門職、ということになります。分断があるから架け橋が要る。取り持つ人が不在だから、それを専任で担う職務が要る。本連載でたどってきた課題は、この一つの役割に収束します。
DXAは、この架け橋となる人材を常駐(準委任契約)という形で供給し、4つのコアプロセスを通じてデータ活用の「お膳立て」を進めます。さらに担当者のローテーションによって、特定の「あの人頼み」に陥る属人化も防ぎます。目指すのは、クライアント企業が自らデータ活用を推進できる「自走状態(=真の内製化)」です。AEは単に作業を代行する人ではなく、データ活用のプロセスという「仕組み」を組織に根付かせ、最後は自分がいなくても回る状態をつくることを役割としているのです。
では、その「自走状態」とは具体的にどういうゴールなのか。次回は、内製化を「お膳立ての完了」として捉える考え方を掘り下げます。
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AEが実際の現場でどのように「架け橋」として機能したのか。具体的な事例はこちらをご覧ください。
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「架け橋」となるアナリティクスエンジニアが、常駐でどのようにデータ活用を支援し、自走状態へ導くのか。サービスの全体像をまとめた資料です。
株式会社UNCOVER TRUTH
ビジネスデベロップメントグループ DX-Acceleratorチーム
アナリティクスエンジニアユニット リーダー。クライアントのデータ活用を推進するとともに、メンバーの採用やチームビルディング、強い組織づくりに注力している。


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