はじめに
【前編の振り返り】
前編では、破棄寸前だったCDPを、キューサイ株式会社の小森谷氏のリーダーシップと事業思想を深く理解するUNCOVER TRUTH(DXA)の伴走によって再構築したプロセスを紐解いた。「ウェルエイジング」という思想をデータマートへと落とし込んだ同社。後編では、これを経営システムへと昇華させる独自の構想「Growth OS」の全貌と、AI時代における究極のインフラ論、そしてこれからのパートナーシップの在り方について深く切り込む。
数千万円を投じたCDPが「ただの箱」と化していた状態から、いかにして現場が使える本物のデータ基盤へと再生させたのか。前編では、CDP刷新の舞台裏と、キューサイ独自の経営思想「ウェルエイジング」をデータ構造へ落とし込んでいくプロセスを詳しく紐解いています。まだお読みでない方は、こちらの記事からご覧ください。

右:株式会社UNCOVER TRUTH 取締役COO 小畑 陽一氏
経営(PL)と現場(KPI)を直結させる「Growth OS」
広告依存からの脱却。「再現性×独自性」の成長モデルへ
小畑:前編では、現場のデータが綺麗に整理され、顧客理解の土台が整ったところまでお聞きしました。小森谷さんがここからさらに目指しているところは、やはり「AIを用いたディープな顧客理解」になってくるのでしょうか。
小森谷氏:まさにそこが核心です。今は「フィルターバブル」によって、お客様が自ら情報を取りにいかないと、メーカー側のメッセージがなかなか届かない時代になっています。だからこそ、お客様がどの「エイジングサイン」をきっかけに我々のカテゴリーにエントリーしたのか、その瞬間をデータやAIで掴むことが死活問題になります。
小畑:なるほど。その瞬間さえ捉えられれば、先回りのアプローチができると。
小森谷氏:そうです。1対1の商品提案にとどまらず、バスケット分析等を用いて他のエイジングイシューにも先回りした提案ができる。これこそが、真のLTV向上への道筋です。そして、この「AIを用いた顧客理解」を現場のオペレーションだけに閉じ込めず、全社で機能するシステム構造へと昇華させるものこそが、私たちが今まさに構築している『Growth OS』です。
小畑:現場のデータ活用(AI)を、一気に全社・経営のレイヤーへと引き上げるわけですね。
小森谷氏:はい。どれだけ現場でAIを活用して顧客理解が深まっても、それが経営のPL(損益計算書)にどう跳ね返っているのかを説明できなければ、経営としての次の投資判断が難しくなってしまいますから。実は、中期経営計画において、従来の「広告環境に依存して勝つ時代」からの脱却を宣言しているんです。顧客資産を軸とした「再現性×独自性」のある成長モデルへの転換です。その成長を実現するための構造設計であり、単なるデジタル基盤の名称ではなく、経営の意思決定システムそのものが、この『Growth OS』なのです。
小畑:『Growth OS』は単なるデジタル基盤の名称ではなく、経営システムそのものなのですね。具体的にどのような構造になっているのでしょうか。
小森谷氏:『Growth OS』は3つの要素で構成されています。まず「PHILOSOPHY(思想)」としてのウェルエイジングがあり、それを「EXPERIENCE(体験)」としてのウェルタイムに落とし込む。そして、それらを成長のエンジンとしてつなぐのが「Growth OS」です。
具体的には、「顧客理解 ➔ 商品開発・施策実行 ➔ 経営インパクトへの寄与 ➔ そして学習」という循環のループを回します。現場のオペレーションKPIだけを見るのではなく、このループがPLまで繋がって初めて、経営視点での正しいPDCAが回るのです。
投資と回収(ROI)を可視化し、事業をドライブさせる
小畑:素晴らしいですね。LTVの最大化をKGIに据え、そのドライバーである「顧客の状態変化(態度・行動変容)」を促すレバーが、PLのどの数字を動かしているのかが可視化されるわけですね。
小森谷氏:その通りです。Growth OSによって全社のデータが共通化されたことで、各施策の中長期的な寄与度を定量的に検証できるようになりました。「まずは1回テストしてみて、その結果をデータで検証しよう」という意思決定が経営陣ともスムーズに行えるようになったのは、データ構造という足腰を強めた最大の恩恵です。
数年後に「BIはなくなる」。AIレディなデータ基盤構築の未来
「速く学ぶ企業が勝つ」。AIエージェントが自律的に分析する時代
小畑:ここでさらに驚くべきは、小森谷さんがすでに「BIツールの先」の世界を見据えている点です。取材の中で、小森谷さんから『数年後にBIはなくなると思っている』という強烈な未来予測が飛び出しました。
小森谷氏:本気でそう思っています(笑)。先日、取引先様をお招きして今後の事業方針を共有する『キューサイ パートナーサミット(QPS)』を開催したのですが、そこでもお伝えした通り、AIの進化によって顧客の比較プロセスがブラックボックス化する時代においては「速く学ぶ企業が勝つ」と考えています。今、社内で実際に「AIスタジオ」などの先端環境を使い始めていますが、AIはもはや使えて当たり前です。重要なのは「問いを持てる人」と「学習する構造」です。
共通化された正しいデータ構造(Growth OS)さえあれば、AIエージェントに「今週の課題と対策を教えて」と投げるだけで、自律的に高度な分析が行われます。顧客の声を起点に勝ち筋を探索する仕組み(社内呼称:KAKUHEN)等を通じて高速で学習を回す。数年後にはBIという中間レイヤーすら縮小し、AIが直接業務プロセスに入り込む世界観に移行するはずです。
小畑:まさに私たちが構想している「AIレディ」なデータ基盤環境の究極の形ですね。どれだけ優れたAIを導入しても、インプットするデータの品質や構造が整っていなければ、AIからのアウトプットも意味を成しません。キューサイ様が全社一丸となってデータマートを構築し、全社のデータ構造をGrowth OSの概念で統一してこられたからこそ、最もAIの恩恵を受けやすい状態にあるのだと確信しました。
小森谷氏:おっしゃる通り、「構造が企業を変える」のです。システムやAIがどれだけ進化しても、結局のところ「データ構造が綺麗に作られているか」が一番重要であり、我々の最大の競争優位性になると考えています。

求められる「共創パートナー」の姿と3つの条件
再現性・因果・アセット。共に学習し価値を創る
小畑:AIが実務に溶け込む時代において、外部パートナーとの関わり方はどのように変わっていくべきだとお考えですか?
小森谷氏:パートナーサミットで、我々はこれからのパートナーシップの在り方として「パートナーに問う3つのこと」を提示しました。1つ目は、そのアイデアに次の展開への「再現性」があるか。2つ目は、施策が効いた「因果(理由)」を説明できるか。3つ目は、プロジェクトが終わった時にキューサイに何が残るかという「アセット」の視点です。単なる受発注の関係を超え、顧客理解と学習を通じて共にウェルエイジング社会を創造する「共創」のスタンスが求められます。もちろん、我々自身も「無難な提案を選ぶ」のではなく「学びの蓄積を成果とする」発注者へと変わる覚悟を持っています。
「DXA」に期待するプラスアルファの価値
小畑:まさに「再現性」「因果」「アセット」ですね。私たちDXAも、ただ常駐してアウトプットを出すだけではなく、そこが問われていると痛感します。弊社の常駐型伴走サービスに対して、さらに高いバリューを発揮するための期待があれば教えてください。
小森谷氏:我々の構想に寄り添い、データ基盤の整備を共にやりきってくれたことには本当に感謝しています。UNCOVER TRUTHさんには、我々の思想を深く理解してくれているからこそ、そこからさらに一歩踏み込んでほしい。現場の業務に真摯に向き合うだけでなく、金曜日のナレッジワークなどを活かして他社の成功事例やAIエージェントの活用知見を仕組み化し、キューサイに「プラスアルファの価値」や「新しいアセット」をもたらしてくれることを期待しています。これからもガンガン新しい提案をぶつけてきてほしいですね。
小畑:身が引き締まる思いです。綺麗な戦略を描くコンサルタントは世の中にたくさんいますが、私たちは、キューサイ様のように高い志を持つ企業の戦略を、現場のデータ構造にまで落とし込んで『実装しきる』ことに命をかけています。今後、BIからAIへの移行も含め、御社の『Growth OS』が日本を代表するフレームワークとなるよう、しがみついてでも共に汗をかき続けたいと思います。小森谷さん、本日は熱いお話をありがとうございました!
まとめ

キューサイ様が目指す「Growth OS」は、単なるデジタル基盤ではなく、顧客理解を起点に「思想を体験へ、体験を成長エンジンへとつなぐ」データとAIを活用した意思決定システムです。
しかし当時、全社的なデータ環境には「DWHとCDPの役割重複」や「システム間のデータ不整合」に加え、現場の複雑な業務要件が個別最適化され、集計ロジックがブラックボックス化しているという構造的な課題(壁)が横たわっていました。どれほど優れた思想やシステムを掲げても、足元のデータ構造が現場のオペレーションと乖離していれば、Growth OSは駆動しません。
この巨大な循環ループを単に下から支えるのではなく、共に回し、進化させていくために参画しているのがUNCOVER TRUTHの「DXA」です。DXAの役割は、データ抽出やシステム保守といった「技術作業の代行」ではありません。私たちが培ってきたノウハウをキューサイ様の現場力と掛け合わせ、共にデータ環境を最適化していくことです。AI時代のパートナーシップに求められる「再現性・因果関係・アセット」という3つの要件に真摯に応え、プロジェクト終了後も組織に確かな価値が残り続ける状態を目指します。
具体的には、キューサイ様の「ウェルエイジング」という思想を深く理解した上で、それを現場のデータ構造へと落とし込む「データ設計」を担います。週4日の現場常駐によって複雑な集計ロジックや現場要件を共に解きほぐし、金曜日のナレッジワークを通じて最先端の知見を組織へと還流させる。この密着型の伴走支援によって、Growth OSが自律的に駆動するための「AIレディな土台」を実装し、将来的な内製化に向けた確固たる「組織的なアセット」の蓄積を支援しています。
【経営層・DX推進リーダーの方へ】立派な戦略を、現場で機能するデータ基盤へと「実装」できていますか?
数千万円のCDPを導入したものの活用しきれない、PLとKPIが繋がらない、泥臭くデータマートを構築できる人材がいない……。
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前編はこちら
CDPから思想の実装へ!LTVを最大化するデータ活用【前編】
破棄寸前だったCDPの再構築から、経営思想「ウェルエイジング」をデータへ落とし込むまでの伴走プロセスを紐解いています。


