はじめに
「視聴データも、加入のデータも、たしかにある。けれど、次の一手を決める材料として”使える”状態にはなっていない」——会員制のサービスを運営する企業ほど、この壁にぶつかります。データ基盤はある。分析できる人もいる。それでも、現場からの依頼は分析チームに積み上がり、数字は部署ごとにバラバラで、最後は「感覚」で意思決定してしまう。本記事では、有料放送・動画配信サービスを運営する企業に常駐したDXA(DX-Accelerator)が、散在する視聴・加入データを「意思決定に使える」形へ設計し直した取り組みを、匿名の事例としてご紹介します。
本事例の中核は「分析用データの作成(データマート構築)」です。DXAがコアプロセスとして何をどう整備するのかは、こちらの記事で詳しく解説しています。
「データはあるのに、意思決定に使えない」という壁
今回の舞台は、全国規模で有料放送と動画配信サービスを展開する企業です。衛星放送による有料チャンネル、インターネット経由のオンデマンド配信に加え、オリジナル番組の制作や音楽・スポーツイベントの企画運営まで手がける、多面的なエンタテインメント事業を持っています。顧客は「会員」であり、加入・継続・解約という一連の行動そのものが事業の生命線です。
DXAは、この企業のなかでも特にデータ分析ニーズの大きい顧客戦略・宣伝領域(CX戦略・宣伝部門と、両者が合同で動く統合プランニングチーム)にコミットする形で参画しました。社内には分析を専門に担う部署も存在しますが、だからこそ生じていた課題がありました。
会社の課題:会員をつなぎとめ、もっと楽しんでもらう
会員制サービスである以上、経営の焦点は明快です。ひとつは「会員数の維持・増加」。解約を食い止め、新規加入とリピート加入を増やすこと。もうひとつは「サービスのエンゲージメント向上」。動画配信サービスの使い勝手(UI/UX)を磨き、既存顧客がどんな人で、何を求めているのかをつかむこと。いずれも、視聴行動や加入動向といったデータを正しく読み解けて初めて、打ち手に落とし込めるテーマです。
組織の課題:依頼の渋滞と、バラバラな指標
一方、現場では三つの課題が重なっていました。
1.分析依頼の渋滞
社内の分析チームに依頼が集中して手が空かず、「見たい数字がすぐに出てこない」状態が常態化していました。分析そのものが滞り、意思決定のスピードを落としていました。
2.ビジネスとデータマネジメントのすれ違い
「施策を回したいビジネスサイド」と「データを守り整えるデータマネジメントサイド」の間で足並みがそろわず、分析の効率が上がりにくい構造になっていました。
3.指標の不統一
社内データの整備や、各部署が使うKPI指標の統一が発展途上でした。同じ「加入」「視聴」でも部署ごとに数え方が異なれば、数字は噛み合いません。さらに、過去データの蓄積が十分でなく、目標値が主観的に設計されていたため、実態との乖離も生まれていました。検証する軸がないので振り返りができず、次の打ち手に活かせない——結果として、意思決定が「感覚」や「個別集計」に頼りがちになっていたのです。

DXAの取り組み:視聴・加入データを「使える」形に設計する
DXAが担ったのは、散在する視聴・加入データを「意思決定に使えるデータ」へと設計し直す役割です。データウェアハウス(DWH)からの分析用データマート構築を起点に、可視化、実績検証、そして指標の共通化までを一貫して引き受けました。
取り組み① 分析用データマートの構築
まず着手したのは、分析の土台となるデータマートづくりです。「何を見たいのか」という要件定義から、DWHのデータを集めてマートとして形にするまでを一貫して担当。あわせて作業内容や定義をドキュメントとして残し、誰が見ても同じ数字にたどり着ける状態を整えました。これにより、その都度ゼロから集計する手作業から、現場を解放する準備が整います。
取り組み② 視聴動向と解約・離脱の可視化
作成したマートをもとに、BIツール(データポータル(元Looker Studio))でダッシュボードを構築しました。KPIの推移、解約・離脱に関する動き、視聴動向といったアドホックなテーマまで、知りたいときに自分で確認できる環境を用意。さらに、これまで散らばっていたドラマ・音楽などの過去タイトル別データを集約してBI化し、「過去と比べてどうか」を見られるようにしました。数字の算出だけでなく、その数字が何を意味するのかという考察や、サマリ資料の作成まで踏み込んで巻き取った点も特徴です。
DXAが可視化のプロセスで何を大切にしているかは、こちらの記事でも解説しています。
取り組み③ 実績検証と指標の「共通言語」化
「作って終わり」にしないために、検証の仕組みづくりにも取り組みました。プランナーへ過去の類似データを整理して提供し、施策を考える材料を手元に届ける。全案件について週次・月次でアクセス解析(GA4)の数値や加入実績を集計し、宣伝部門全体で共有する。コンテンツ単位では、ジャンル別・経過月別の残存数、CPA回収率、視聴料収入などを算出し、レビューできる形に整える。こうして「振り返りの軸」を部門共通のものにしていきました。
伝え方にも工夫を凝らしています。定例で議論した内容はドキュメントツールにまとめ、担当者の理解と部内共有を後押しする。BI化するまでもない依頼はスプレッドシートで素早く集計して共有し、長期的に使う分析はダッシュボードとして可視化する。用途に応じて手段を使い分けることで、ナレッジが現場に定着しやすくなりました。
得られた効果
- 「感覚」から「データ」への意思決定へ
主観的だった数値設計を実態に即した形へと是正し、感覚や個別集計に頼っていた判断を、共通のデータにもとづく判断へ近づけました。 - 振り返りができる状態に
週次・月次の実績検証やコンテンツ別の指標が整ったことで、施策を「やりっぱなし」にせず、次の一手へ還元できるサイクルが回り始めました。 - 分析の渋滞をほぐす
要件定義から可視化、考察までをDXAが巻き取ることで、分析チームに集中していた依頼の負荷を分散し、必要な数字がタイムリーに届く状態をつくりました。 - 指標とナレッジの共通化
部門横断で使える指標とドキュメントを整備し、属人的だったデータ活用を、チームで再現できる土台へと変えていきました。

今後の展望:視聴データが「打ち手の検証装置」になる
視聴・加入データの活用設計が回り始めると、会員の維持やエンゲージメント向上に向けた施策は「打って終わり」から「打って、検証して、次につなげる」ものへと変わります。誰が見ても同じ数字にたどり着けるデータマートと、部門共通の指標があれば、ビジネスサイドとデータマネジメントサイドのすれ違いも、共通の土台の上で解消へ向かいます。
DXAが常駐で担うのは、まさにこの「土台を供給し続ける役割」です。データの整備・可視化・指標の共通化を通じて、やがてはクライアント自身がデータを使いこなす自走化へとつなげていく。視聴データという、エンタテインメント事業ならではの貴重な資産を、意思決定に効く「使える資産」へと変え続けること——それが、この取り組みが目指す先です。
あなたの組織はどの段階?無料相談はこちらから!
その他の事例記事はこちら
大手スポーツアパレル:CRM自走化とデータマート構築
総合広告グループ テック会社:データ基盤の橋渡し
大手流通・百貨店HD:IT投資を「使える」に変える
お役立ち資料をご活用ください!
データ活用の部長さん必見!データ活用 内製化の正しい進め方
自組織の現在地を確かめたうえで、次の段階へ着実に進むための内製化の進め方をまとめた資料です。
株式会社UNCOVER TRUTH
アナリティクスエンジニアユニット リーダー
2022年、UNCOVER TRUTHに中途入社。
大手GMS・外資系SPA・大手百貨店といった小売業界を経験後、一念発起してIT業界に転身。
広告代理店・マーケティング支援会社などのデータ業務を支援に携わる。
現在はユニットリーダーとして、クライアントのデータ活用を推進するとともに、
メンバーの採用やチームビルディング、強い組織づくりに注力。出雲市在住。


![あなたの組織の沼を診断する [無料相談]](https://www.uncovertruth.co.jp/dx-accelerator/wp/wp-content/uploads/2026/07/あなたの組織の沼を診断する無料相談-300x158.png)




